十勝Z団(トカチゼットダン)

公益財団法人とかち財団

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北海道・十勝から未来を切り開き、新たな価値を掘り起こすビジネスイベントとして、10月16日、17日と2日間にわたって開催された「KAIKON -開墾-」。2日目の10月17日はインザスイートで、カンファレンスイベントが開催されました!

十勝域内・域外や業界を問わず、地域発のビジネスで事業成長や新たな価値創出を目指す多様な登壇者が全国から集結しました。

そして、参加者にとっては、ビジネスにおける事業成長のきっかけや課題解決、連携の可能性を探り、新たな事業創発に向けたヒントを得る貴重な場となりました。

後編では、KAIKON COLLABORATION PITCHトークセッション2ミートアップの模様についてお届けします!


KAIKON COLLABORATION PITCH


十勝の価値をアップデートする最新のソリューションを紹介し、登壇者と参加者が事業連携を創出することを目指した「KAIKON COLLABORATION PITCH」には、十勝内外のスタートアップが全国から集結し、10者が登壇しました。

各者は7分間の持ち時間の中で、事業概要や現在の取り組み、これから目指す事業の方向性について紹介するとともに、参加者に向けた連携・協力を呼びかけました。


・amu株式会社(宮城県) 加藤広大さん
廃漁網をアパレル用の生地などにアップサイクルするスタートアップ。アップサイクルした生地「amuca」にはブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティ情報を付加することで、「プロダクトストーリー」として新たな付加価値を付けられることも特徴の一つ。また、アイデア次第で様々な素材の提案・提供が可能であり、現在は農業現場における廃棄物に着目している。


・株式会社e-Combu(十勝・広尾町) 錦古里大河さん
漁業の中で廃棄される「もったいない海藻」を活用し、牛のゲップから排出されるメタンガス(国内での排出量の1/4を占める)を低減させる飼料添加物の研究開発、養鶏場向けの粉末飼料(卵の品質改善を行う)や農業用の液肥の販売事業を行っている。昆布などを用途に合わせたサイズに裁断することで、食用以外での使い方のアイデアや販売先を見つけたい。


・アルプス技研グループ(神奈川県) 須藤泰志さん
農業生産所得の減少、農業従事者の減少・高齢化問題を解決するため、グループ会社である株式会社DONKEYで開発している農業用小型多機能ロボット「DONKEY」を活用し、農業分野での省力化・省人化促進を進めている。また、グループ内の農業の知見を持った専門人材によるサポート体制も整備していることをアピール。


・株式会社ソルプレーサ・イノベーションズ(十勝・清水町) 大久保航也さん
十勝を拠点に活動するフットサルチーム「Sorpresa十勝」の運営を主軸にスポーツを通じた地方創生事業(まちづくり、教育支援など)、マーケティング事業等を展開し、地域にしっかりと根付くベンチャー企業を目指し活動している。スポーツチームが地域、人材、行政など様々なプレイヤーのハブになれる強みを活かしたい、とスポンサー参画などによる支援を参加者に広く呼びかけた。


・クラフトバンク株式会社(東京都) 宮田巧さん
日本が世界に誇る建築職人と建設工事会社の生産性向上を、工事管理SaaSなどのDXを通じて支援するスタートアップ。また、建設業界の交流イベント「職人酒場」を全国で年100回近く開催し、建設業界内でのネットワーキング機会も提供している。建設業界の成長と効率化を図りたいという思いから、連携に関心のある参加者に対し広くアピールした。


・株式会社Perma Future(静岡県) 池田航介さん
「旅行じゃなく農業しない?」をテーマに、農業ワーケーションサービス「ののの(No 農 No Life)」を展開。利用者は一律7700円で農家が用意した宿泊場所に最大2週間まで滞在することができ、日中3〜4時間は農作業を手伝い、残りの時間で観光や仕事などをすることができる。一次産業分野での人手不足解消だけでなく、関係人口の増加や地域の活性化にも貢献できるため、関心のある一次産業事業者や自治体との連携を呼びかけた。


・十勝シティデザイン株式会社(十勝・帯広市) 柏尾哲哉さん
帯広中心市街の「HOTEL NUPKA」や「馬車BAR」の運営を軸に、「ホテルから『まち』を作る、『まち』が地域を活性化する」をテーマとして様々な事業を展開。また、都市圏の関係人口が地域側と密接に関って新しい価値創造を実現する「リゾベーション」構想を推進しており、現在は「関係人口型地域商社」プログラムとして、都市圏の人材と連携して地方特産品などを販売してもらい、取引が成立したら手数料を支払うという仕組みを構築中。


・株式会社PITTAN(兵庫県) 辻本和也さん
”Lifelong Positivity”をビジョンに、誰でも簡便に自身の身体の状態を可視化でき、人生を最大限楽しくすることをミッションとしている。少量の「汗」から肌や身体状況がその場で判定できるポータブル機器を開発しており、来年リリース予定。将来的には家畜の健康管理、土壌中の微生物やバクテリアの動きの可視化などへの応用も視野に入れており、今後の連携について参加者とディスカッションを行いたいとアピール。


・とかちフルーツビレッジ(十勝・音更町) 林本健志さん
「可能性の種を創造し、豊かな未来に食を繋ぐ」をミッションとし、2023年から十勝では栽培が難しいと言われていた白桃・黄桃の生産に挑戦しており、2025年に本格的な収穫を予定。また、桃を含めた果樹栽培のビジネスモデルを確立し、十勝で広めていくことを目指している。今後は、桃の品質向上と栽培技術の体系化のために、サポートデバイスの開発や環境データの取得・分析を行うことを目指しており、参加者に対し連携を呼びかけた。


・株式会社WAKU(岡山県) 片野田大輝さん
植物のCO2固定機能を向上させ、生育を促進する効果がある「酸化型グルタチオン」資材を開発し、農業分野における環境負荷低減と作物収量増の両立を目指している。さらに、今後は営農事業への参入も視野に入れており、事業承継に課題を抱えている一次産業事業者とのマッチングや農業分野での人材採用も積極的に行っていくことをアピールした。


登壇者それぞれが、地域資源や社会課題・ニーズに基づいた事業内容についてプレゼンし、セッション終了後には参加者と熱心にディスカッションする様子があちらこちらで見られるなど、登壇者と参加者との活発な交流が生み出された熱量の高いセッションとなりました。


トークセッション2「地域資源・課題×新事業〜大企業は十勝をどう見ているのか?〜」


本セッションでは、十勝の地域資源や課題に着目して、新たなビジネスチャンスを探る議論が展開されました。登壇者からは、地域資源や課題をどのように捉え、十勝の中小企業と連携することでどのようなビジネスの種が生まれるのかが語られました。
また、登壇者との双方向のコミュニケーションが可能なアプリを使用して、登壇者への質問や意見が送信・可視化され、会場全体が積極的に参加する形でセッションが進行しました。

・石屋製菓株式会社 経営管理部 ゼネラルマネージャー 近藤亜実氏(札幌市)  
北海道札幌市出身 2005年北海道大学経済学部卒業 ホテルチェーン勤務、知財事務所勤務を経て、2013年に子育てのため東京からU ターン 2016年石屋製菓株式会社入社 人事部にて主に採用業務に従事後、2018年に経営管理部に異動 経営管理全般(経営企画、法務、知財、コンプライアンス体制構築)業務に従事。2022年5月~ 現職 現在は、ISHIYAグループ全体の最適化と更なる発展のための組織体制づくりをミッションとしている。

・栗田工業株式会社 イノベーション本部 新規事業開発部門 事業開発第一グループ 部長 柳原茂生氏(東京都)
1974年神奈川県生まれ。1997年栗田工業に入社。水処理プラント建設の営業を経験後、2022年からシナリオプランニング、戦略構築、及び企業間連携による事業創出に携わる。2024年から社会価値を起点としたイノベーションに関わる新規事業開発の担当となる。

・エア・ウォーター北海道株式会社 事業企画部 インキュベーショングループ リーダー 棟方祐介氏(札幌市)
1979年札幌生まれ。2000年に臨床検査技師 国家資格を取得し、5年ほど医療機関にて従事。主に心電図、脳波、エコー検査などを行う。その後睡眠事業に力を入れていた、北海道エア・ウォーター株式会社(現:エア・ウォーター北海道株式会社)に入社。10年ほど睡眠事業に従事した後、在宅医療事業全般の運営管理業務を行う。その後新たな挑戦として、社内公募にて、本社事業企画部に異動し、エア・ウォーターの森プロジェクトマネージャーの一人として、オープンイノベーション施設運営や新規事業創造が主たるミッションとなる。

・モデレーター:公益財団法人とかち財団/LAND 高橋司氏


十勝の「資源」をどう捉えているか?


なかなかイメージがしづらい大きな規模の企業との連携について、縁遠さを感じてしまうこともあるのではないかと思いますが、そこをモデレーターの高橋さんが、ずばり聞いていきます。
まずは「自社ビジネスに有用性のある十勝の資源は何であると考えているか?」

三者からの回答はこちらです。
・近藤さん(石屋製菓):農産物、農業に携わる人材・教育機関
・柳原さん(栗田工業):資源の循環・利活用マッチング
・棟方さん(エア・ウォーター北海道):農・食、酪農副産物の資源化


製菓メーカーである石屋製菓近藤さんからは、お菓子の主要な原料となる小麦・生クリーム・砂糖は道産100%で使用していることから、十勝の恵みを十分に受けているという話がありました。それに関連して、十勝には農業に関する教育機関が多く、農業に携わりながら地域課題に向き合う人的資源も非常に魅力的な資源であると話しました。

水処理の技術に大きな強みを持つ栗田工業柳原さんは、例えば食品工場における製造工程において有効活用されずに捨てざるを得ない水・廃棄物・エネルギーを再資源化する取り組みにチャレンジされています。そのうえで、再資源化後の活用について、十勝も含めた他地域・他業界でどのようなニーズがあるのかの探索を積極的に行なっており、様々なプレイヤーとの連携関係を構築していると説明しました。

2024年12月に地域共創を目的としたオープンイノベーション施設「エア・ウォーターの森」を開業するエア・ウォーター北海道棟方さんは、十勝産農産物の加工事業の他、鹿追町の「しかおい水素ファーム」で牛のゲップから出るメタンガスから水素を製造する事業を行なっているなど、十勝にはたくさんの地域資源が眠っていることを話しました。

石屋製菓株式会社 近藤亜実氏


十勝の事業者とどう連携できるか?


栗田工業の柳原さんは、地域の事業者と共に資源を循環させる仕組みづくりに意欲を見せました。再資源化したもののプロダクトアウトではなく、地域の課題に向き合い、地域の事業者との連携・コミュニケーションを通じて本当に必要とされるものを提供することが重要であり、地域の事業者の力を借りたいと強調します。

石屋製菓の近藤さんは「食」「農」「観光」をキーワードとして、連携はどんな形でも可能性があるため、ぜひ気軽に声をかけてほしいと参加者に訴えかけました。また、十勝のしんむら牧場の「ミルクジャム」とのコラボスイーツ商品を過去に2つ販売した事例や、石屋製菓が過去に実施したクラウドファンディングの返礼品として廃棄野菜をペーパーアイテムにアップサイクルさせる十勝の「やさいくる」とのコラボレーションを行なった事例を紹介しました。

エア・ウォーター北海道棟方さんは、「十勝の皆さんからは、強い連携力・団結力とパワーを感じる。連携には決められた形はないので気軽に声をかけていただければ嬉しいし、我々としてもどのような形で連携できるのかを一生懸命考えていきたい」と話しました。

栗田工業株式会社 柳原茂生氏


参加者に向けたメッセージ


石屋製菓近藤さんからは、会社の長期ビジョンとして「100年先も、北海道に愛される会社へ」を掲げており、とても元気な十勝の皆さんとこれからワクワクするような事業、商品を一緒に作っていきたいと考えているので、ぜひお声がけいただきたいとのメッセージがありました。

栗田工業柳原さんは、 一般的に言われている「社会課題」はすなわち「地域の課題」であり、それをビジネスとしてどう解決していくのかという点で十勝の皆さんとご一緒し、その先にカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの確立といったテーマに貢献できるようなグローバル展開を見据えていきたいと話しました。

そして、エア・ウォーター北海道棟方さんは、「エア・ウォーターの森」も活用しながら、北海道の社会課題を解決するために他の事業者と連携できることはないかということを日々模索していると説明。札幌だけでなく十勝を含めた道内の地域が連携していくことで、北海道全体の社会課題解決に繋がっていくと連携の重要性を訴え、気軽に声をかけてほしいと呼びかけました。

エア・ウォーター北海道株式会社 棟方祐介氏



セッションの途中では、登壇者への質問アプリを使った参加者からの質問に、石屋製菓近藤さんが回答する場面もあり、スタートアップのようなチャレンジ精神を持ちつつも企業としての成長を重視している姿勢が窺い知れました。

近藤さんは、会社の方針として「日本一、失敗できる会社」を打ち出し、社員の積極的なチャレンジを称え合う社風がある中、年間表彰でも「失敗が表彰される」文化があることを紹介しました。

十勝にはビジネスの種になる資源と課題が共存し、規模の異なるプレイヤー同士が連携することで、地域経済の活性化が進むことに気づけた時間となりました。

今はまだ規模があまり大きくはない事業の形態でも、地域に根差しているからこその視点やネットワークがあり、それこそが大企業にとって新たな気づきや可能性を生み出すチャンスとなります。参加者の皆さんも、登壇者の皆さんにまずは気軽に話してみよう!と思えたセッションとなったのではないでしょうか。


ミートアップ


カンファレンスイベント本編が終了後、総勢80名が参加してのミートアップが開催されました。
参加者は各々前日に行われたキャラバンやカンファレンスでの感想を語り合い、また今後の事業連携に向けた熱心な意見交換が交わされるなど、将来的な新ビジネスの創出への可能性を秘めたマッチングが新たに生み出された熱気に溢れた場となりました。


まとめ(参加者の声)


参加者の皆さんからは、
「キーノートスピーチの50分は自分も世界との繋がりを感じ、私にはこれから何が出来るのか、どうしたら行動からの実現につながるのか、出来るのかを深く考えさせられる時間となり、さらに自分自身の考えを深く強く持ちたいと思えた」
「これからの進路やビジネスモデルを考えるうえでのヒントを得られた」
「事業の拡大を考えたときに、規模に応じたフェーズがあることを知ることができた。焦って拡大するのではなく、理念を大切にしながら拡大していくことができることに気づき、安心と情熱をいただいた」
「一次産業の課題、人口減少の危機など、現状暗いイメージが多かったが、多くの若い方々が新規事業に取り組んで、日本、北海道、十勝地域を活性化しようとされている姿に感動した」

といった声が聞かれました。

各セッションで語られた挑戦のストーリーや成長のプロセスから、参加者の事業成長へのモチベーション向上や、新規事業創出へのインスピレーション・刺激がもたらされ、また参加者同士や登壇者との交流から、十勝の未来を切り開く今後の具体的なアクションにつながるイベントとなったのではないでしょうか。

「KAIKON -開墾-」を通じて生まれた新たなビジネスの種がより強く地域に根差し、大きく広がることで、十勝の明るい未来に繋がっていくよう、これからも参加者の皆さんの活動を応援していきたいと思います!


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