十勝で生まれたチャレンジが次々と成長拡大をみせています。
令和7年3月18日、公益財団法人とかち財団は、令和5年度「とかちビジネスチャレンジ補助金」採択者4者の報告会を開催しました。補助金を活用して創出された新たな事業や、さらに飛躍した事業に関する報告会の模様についてレポートします。
採択者4者が補助金を活用して成長した事業を紹介!
令和7年3月18日、公益財団法人とかち財団が運営するスタートアップ支援スペース「LAND」で、令和5年度「とかちビジネスチャレンジ補助金」報告会が開催されました。
「とかちビジネスチャレンジ補助金」
地域事業者の自律的な成長や、ものづくり産業の活性化を支援し、十勝の持続的な経済成長を促進することを目的に実施しています。十勝地域で起業創業する方や中小企業が取り組む、新事業・新製品・新サービスの開発、新市場の開拓や、競争力、生産力向上に資する「ものづくり」、事業拡大などの幅広い取り組みを支援しています。
報告会には、令和5年度「とかちビジネスチャレンジ補助金」採択者4者が一同に介すとともに、今後、起業を志す方や既存事業をさらに飛躍させたいと考える経営者、また本報告会の前に開催された令和7年度「とかちビジネスチャレンジ補助金」説明会の参加者らが参加。4者からの報告に熱心に耳を傾けていました。
地域の課題や変化を捉えた事業が十勝の産業を活性化させる
報告会の冒頭では、とかち財団の森川執行役員事務局長から「この補助事業が神奈川県の起業家支援財団と当財団との合併をきっかけに設立され、寄付者である松井利夫さん(アルプス技研創業者・起業家支援財団創設者)の協力がなければ産まれなかった」と事業の経緯が語られたほか、「起業する事、事業を継続していく事には常に『覚悟』が求められ、補助金の活用を考えている方はぜひ、最後までやり遂げて頂きたい」「補助金に限らず皆さんの事業を加速させるために上手くとかち財団を活用して欲しい」とのメッセージが送られ会がスタートしました。
とかち財団 森川芳浩執行役員事務局長
令和5年度とかちビジネスチャレンジ補助金事業 採択者
株式会社スマヒロ / 北川 宏さん(帯広市)
事業計画名
求人マッチングWebメディア「TCRU(ティクル)」で十勝に"ひと"を呼び込み十勝創生を実現
事業内容
北海道十勝に特化した求人マッチングWebメディア「TCRU(ティクル)」の機能強化(TCRU事業をスケールさせるためのAPI機能、給与アルゴリズム機能、SaaS化などのシステム開発)と、人事部や広報部がなく、自ら記事や動画といったコンテンツを制作できない企業向けに取材・記事作成支援を行った。
求人マッチングから観光マッチングに展開。いずれは地域活性化プラットフォーマーに
スマヒロは2022年7月に法人設立し、『圧倒的に面白いディアが十勝を救う』をテーマに十勝に特化した求人マッチングサービス「TCRU」を開始。とかちビジネスチャレンジ補助金ではSaaSをつかったAPI連携をできるようシステムの改修等を行いました。
補助事業終了時点ではサービスの月間数が40,000PV、登録事業者数15社案件数37件でしたが、補助時事業終了後も継続した営業活動やSEO記事の継続投稿、帯広信用金庫との経営層幹部候補のマッチング連携などを行い、月間70,000PV、登録求職者数300名、登録企業33社案件数60件、API導入企業3社まで成長させることができました。途中何度か資金ショートしそうにもなりましたが、なんとかここまで来ることができました。
今後、スマヒロは地域活性化プラットフォーマーとして、求人・観光のみならず「不動産」などの分野にも展開していければと考えています。
株式会社スマヒロ 北川 宏さん
令和5年度とかちビジネスチャレンジ補助金事業 採択者
株式会社New Pan Hokkaido / 長尾 裕樹さん(帯広市)
事業計画名
~北海道産牛肉をDX/WEB3技術を活用し海外市場で販売~
事業内容
十勝産の農畜産物の付加価値・知名度向上のために構築したトレーサビリティサービス「Beef Scope System」の改良と世界への情報発信を行った。具体的には、それぞれの牛の「牛生」(血統・繁殖・肥育・加工・流通・消費まで)をブロックチェーン技術を活用して記録、こだわりの生産情報を映像で見られるQR コードを発行することで、消費者が生産者のこだわりを理解しながら食材を体感できるサービスを構築した。
十勝の生鮮食材のこだわりを伝えるサービスを開発。補助金が信頼に繋がった。
補助事業では、北海道の生鮮食材の販路拡大を目的に、生産者のこだわりをデジタル情報で発信するサービスの開発を行い、十勝産和牛の輸出における北米市場の開拓を行うことが出来ました。
具体的な仕組みとしては国のデータベースに記録されている牛の情報を、個体番号を使って照会し、動画や証明書の画像データと共にQRコードから確認できるというサービスですが、これまではそれぞれの情報がばらばらのデータベースで公開されており、消費者が情報を取得することが容易ではありませんでした。『Beef Scope System』を使えば、スーパーに売られている牛肉にQRコードのシールを貼ったり、飲食店のメニューに番号を付けることで、消費者が容易に食品のトレーサビリティ情報を確認できるようになりました。
補助事業期間終了後は、ライススコープというお米の生産過程を追跡できるシステムを開発し、マンハッタンで導入されました。昨年1億円の売上を達成し、 2030年までに売上10億円の達成を目指しています。牛肉からサービスをスタートし、今はお米、今後は十勝の野菜にも展開できるよう並行して事業を進めています。また、音更町で行われる全国和牛共進会に海外からも多くの方が十勝に来てらえるような情報発信を行っていきたいと考えています。
とかちビジネスチャレンジ補助金に採択されたことは、資金面の支援を頂けただけでなく、私のような移住者にとって地域から認められたという安心感を頂けました。実際に地域の支援機関の支援を受けたことで取引先からの信頼にもつながりました。今後挑戦を考えている方は参考にしてください。株式会社New Pan Hokkaido 長尾 裕樹さん
令和5年度とかちビジネスチャレンジ補助金事業 採択者
株式会社十勝平野蒸溜所 / 宮澤 嘉裕さん(幕別町)
事業計画名
スピリッツ蒸留所設立に係る十勝産スピリッツの開発とブランディング
事業内容
十勝の農林水産物(ボタニカル)を使用した十勝ならではのスピリッツのレシピ開発と試作品の製造、良質な商品を製造するための設備を導入。消費者に商品価値を効果的に伝えるためのラベルやデザインの委託開発を行った。
十勝を活性化させる商品を次々と開発!他分野とも積極連携
私は、元池田町役場の職員で、大好きなお酒のビジネスで起業したいと考え起業を決意。とかちイノベーション・プログラムに参加し、クラフトジンを製造販売する法人を令和6年5月に設立。昨年12月に製品を発売し、起業後1年6カ月でようやく売上を作ることができました。
補助金は広島県の酒類総合研所との共同研究、ジンを製造するための設備(ポンプと冷却タンク)、ブランドトータルデザイン(ロゴやラベルデザイン、化粧箱の開発)、試飲用バーカウンターの購入、試験蒸留器の購入に使わせていただきました。特に、試験蒸留器の導入によりレシピ開発が自社で手軽にできるようになったため、自社ブランドだけでなく、ユーザーの希望するジンを作るという製造戦略を生み出すことができました。昨年11月に『明時(AKATOKI)』というクラウドファンディングの応援購入用のジンを作成し、300万円の支援が集まりました。今月から『ときいろファーム』さんのラズベリーを使った明時の発売を予定しています。また、第3弾の自社製品の開発も終了しており、こちらも年内には販売予定です。
今後の展開は、結婚式の引き出物や、ガストロノミーに関連した観光ツアーの連携など様々な分野と連携しながら経済波及効果を生み出してゆきたいです。
株式会社十勝平野蒸溜所 宮澤 嘉裕さん
令和5年度とかちビジネスチャレンジ補助金事業 採択者
株式会社なまら十勝野 / 小山 勉さん(芽室町)
事業計画名
十勝産サツマイモのブランディングと地域経済活性化への挑戦
事業内容
近年地球温暖化の影響で生産量が低下している九州に代わり、十勝産のさつまいものブランド化を目指し、さつまいも洗浄機とさつまいも選別機の導入を行った。さつまいもを洗浄し規格選別することで、十勝産さつまいもとして商品化。流通経路の確立や、十勝全域で高品質なさつまいも栽培、販売できる環境づくりを進めることで、さつまいもの産地化を目指した。
十勝をさつまいもの産地に。規格化を行うことで売上高の桁を上げた農業法人
なまら十勝野は、十勝の19軒の農家が集まって作った農業法人で、農作物の生産から販売まで行っています。補助金に応募する1年前に九州にさつまいも栽培の可能性を調べに行ってきたところ、温暖化の影響で九州ではさつまいもの栽培が難しくなってきている事を知り、十勝のさつまいもの産地化とブランド化を進める事を決意しました。
その後、茨城の農家を視察し、機械化が必要と考え、とかちビジネスチャレンジ補助金では、さつまいもの洗浄機と選別機を購入しました。これにより、従来は規格化できていなかったサツマイモを規格品として販売することが出来るようになり、青果販売実績が導入前の17倍に、スーパーとの取引ができるようになったので売上高も桁が一つ変わるほど伸ばすことが出来ました。
事業終了後は、スーパーでの販路拡大、焼き芋イベントの参加、ふるさと納税返礼品に参画、飲食店や東京での直売を行ったほか、さつまいものブランディングのためサツマイモサミットへの参加も行いました。現在は、サツマイモチップスや干しイモの製造販売のためのパッケージデザイン開発を進めています。これらの商品開発まで辿り着けたのもこの補助金のお陰です。
今後は、10年で100haの作付面積を目標にブランド化を進めるほか、サツマイモペーストの開発を進めていく予定です。昨年別の補助金を活用しキュアリング倉庫を設置したので、ハイブランド化と、販売所を作っていく計画です。選別機・洗浄機・倉庫がそろったので地域で新しくサツマイモ栽培に挑戦したい方の援助もしていきたいと考えています。今後も応援よろしくお願いします。
株式会社なまら十勝野 小山 勉さん
講評
公益財団法人とかち財団 理事長 金山 紀久さん
最後に、公益財団法人とかち財団の金山利久理事長から主催者として講評がありました。
「どの発表も熱意が非常に高く、特に地域活性に対する強い想いを感じました。本事業は地域の事業者の持続的な発展、ものづくり産業の活性化を通じて十勝の経済成長を促すことが目的です。今回、各採択者からの報告受け、それぞれの事業が次に繋がっていくという確かな期待を抱きました。報告の中では、成し遂げるという意思の強さや、何度も危機を乗り越えたという体験に基づいた話から事業を進める難しさ、リアリティを感じました。」
「スマヒロは『労働力』、NewpanHokkaidoは『輸出』、十勝平野蒸留所は製品を通じた『十勝の活性化』、なまら十勝野は『気候変動』、どれも地域課題や地域が直面している変化を、いち早く察知し解決・活用する先駆的な取り組みです。今後、益々の発展を期待します」
公益財団法人とかち財団 金山紀久理事長
ご参加いただいた皆さんからは、「補助金申請にあたり大変参考になった」「採択者の事業に関心あったので意見交換できてよかった」「事業に対するモチベーションがあがった」といった声が聞かれ、十勝の活性化に向けた新規事業への機運を盛り上げる報告会となったのではないでしょうか。
令和7年度「とかちビジネスチャレンジ補助金」の応募締め切りは4月9日(水)です。ぜひご応募について検討されてみてはいかがでしょうか。
令和7年度「とかちビジネスチャレンジ補助金」の詳細については、こちらからどうぞ!