公益財団法人とかち財団が運営する学生コミュニティ「LANDサークル」と、東京にある情報経営イノベーション専門職大学(通称:iU大学)の学生が連携して実施した、ビジネススキルとアントレプレナーシップを磨く4日間のイベントの実施レポートをお届けします!
LANDサークルとは
LANDサークルは、公益財団法人とかち財団が運営している、十勝地域の大学生、短大生、専門学校生などを対象としたコミュニティです。所属メンバーが自分の趣味や関心を単なる「好き」だけに留めず、LANDスタッフのサポートやサークル活動を通じて起業家精神を育むことを目的としています。自身の活動を社会やビジネスにつなげ、やりたいことを社会的な意義や経済的な価値に変えていくことを目指します。
情報経営イノベーション専門職大学(以下、iU大学という)とは
iU大学は、学生が卒業までに起業に挑戦することをテーマに、現代ビジネス環境に不可欠な技術と経営戦略を融合したカリキュラムを提供する専門職大学です。学生たちが創造的な思考力と実践的なビジネススキルを身に付けることを目的としており、将来の起業家やビジネスリーダーの輩出を目指しています。
このイベントは、LANDサークルとiU大学の学生が協力して、十勝地域の資源を活用したビジネスプランを考案するものです。事前学習を通じて互いの強みを理解し、十勝地域の産業について深く学びます。当日は、学生たちが4チームに分かれ、3年で1億円の売り上げを目指すプランを作成。フィールドワークや現地視察を行い、最終日にプランを発表します。
イベント開始前、学生たちは二回の事前学習を行いました。
LANDサークルとiUの学生がオンラインで初の顔合わせを行うキックオフ会からスタートしました。LANDサークル生とiU大学生が自己紹介を行い、お互いの大学の特色や学んでいる内容について話し合い、相互理解を深めるための大切な時間となりました。
第二回目はプログラムの目的やテーマについて詳しい説明が行われました。LANDスタッフからは、十勝地域の特性や資源、地元企業やスタートアップに関する幅広い情報が提供され、学生たちは地域の潜在的な魅力について学びました。事前に編成された混成チームがZoomでディスカッションを行い、本番に向けての準備を進めました。
4日間にわたる本イベントでは、以下のようなプログラムが実施されました。
いよいよイベント初日がスタートです。iU大学の学生12名が十勝帯広に到着し、LANDサークル生6名と共にLANDに集まりました。まずは、運営側からプログラムの詳細について再確認。アイスブレイクとしてレクリエーションが行われ、参加者同士の親睦を深めました。その後、これからの4日間についてチームでディスカッションを行い、1日目を終えました。
運営側から、このイベントで考案するビジネスプランのテーマについて詳細な説明がありました。その後、各チームは十勝地域の資源の選定と活用の可能性について熱心に議論を重ねました。昼過ぎまでに地域資源を確定させたチームもあれば、フィールドワークを通じて更なる情報収集を行ったチームもありました。
夕方には、ディスカッションの内容や十勝の地域資源、ビジネスプランの方向性を全体で共有。その際、元ベンチャーキャピタルでスタートアップの支援経験を持つ株式会社dandanの三浦さんも参加し、学生たちの発表に対してフィードバックを行いました。
この日も各チームはビジネスプランの作成に励みました。企業へのヒアリングや市場ニーズの調査にも積極的に取り組み、明日のプレゼンテーションに向けて資料作成に着手しました。
いよいよ最終日、各チームがこの4日間で考案したビジネスプランを発表しました。発表会では「LANDの虎」と題して、各チームのプランに対して、株式会社dandanの三浦さんやスポーツで地方創生に取り組む株式会社ELF大久保さん、LANDの高橋さんが審査員として、そのビジネスプランにいくらまでなら出資をするかというという観点で評価を行いました!
チームAは十勝地域の課題となっている脱脂粉乳の過剰在庫と、自然由来の素材を活用した健康的なお菓子を求める親のニーズに着目しました。そこで考えたのが十勝の地域資源として脱脂粉乳を活用した知育菓子「もちもちヨーグルト」です。
十勝地域では、コロナ禍により脱脂粉乳の在庫が7万7989万トンにも膨れ上がり、バター製造の減少と廃棄の問題が懸念されています。一方、子どもに天然成分を多く含むお菓子を与えたいと考えている親がいることが、ユーザー調査の結果からわかりました。市場には様々な種類のお菓子があふれていますが、天然成分を活用したものは多くありません。そこで天然成分の脱脂粉乳を多く含む、子どもでも簡単に作れるヨーグルト「もちもちヨーグルト」を考えました。
子供が遊びながら楽しめ、親も安心して与えられる健康的な知育菓子「もちもちヨーグルト」は、十勝地域の資源を有効活用するとともに、健康意識の高い消費者のニーズに対応することを目指しています。
チームBは、十勝地域の農家と十勝の住民を貴重な資源と捉え、農業労働者の不足という深刻な問題に対処するためのビジネスプラン「アグリワークス」を考案しました。現在十勝地域では、農業分野の労働力不足が顕著です。さらには農業バイトに関心のある人でも心理的な障壁が存在します。これらを解消するために、「アグリワークス」は農業バイトに興味のある人と農家を結びつけるサービスを提供します。このサービスは、リゾートバイト風の形式で長期雇用を促進し、農家と労働者の相互評価制度、詳細な事前説明、経験に応じた昇給システムを導入しています。地域経済の活性化にも貢献するため、宿泊施設として地元の旅館を利用します。さらに、「アグリワークス」はビデオを通じて農作業の内容をわかりやすく伝え、農業分野の労働環境改善に努めています。
日常の忙しさの中でも手軽に食卓を充実させたいという消費者のニーズと、規格外で廃棄される農産物の問題に焦点を当てました。規格外品は十勝地域の農場から出る、見た目は不揃いでも味は変わらない美味しい農産物を活用します。
そこで考えたサービスが「10カット」です。消費者にとって料理をする上で、食材の下処理や準備は非常に手間で時間がかかります。そのため「10カット」では自分の好みに合わせたカット方法や量で冷凍食材を選べ、さらには自宅まで届けてくれるため、料理の準備時間を大幅に短縮できます。
さらに、このサービスは、必要な分だけをオーダーできるため、食材の無駄遣いを防ぎます。
このビジネスプランは、地域の資源を最大限に活かしながら、農家の収益向上と消費者の利便性向上を目指しています。
チームDが活用する十勝地域の資源は「観光資源」です。十勝には豊かな食と自然などの観光資源がたくさんありますが、これらが十分に知られておらず、地域の魅力が全国の多くの人に伝わっていないという課題に着目しました。また、多くの北海道旅行者が札幌に留まる傾向があり、十勝地域への訪問者や移住者が限られています。この問題を解決するため、チームDは修学旅行生を対象とした観光客の定期的な確保を提案しました。このプランでは、十勝好きな人をガイドとして雇い、十勝に特化した情報提供と体験型の観光を取り入れます。これにより、十勝地域の魅力を学生たちに伝え、地域の認知度向上と行政の課題解決に貢献します。また、旅行会社と異なる十勝特化のアプローチが、このプランの強みです。
各チームのビジネスプランの発表を聞いた審査員3名からは、実際にビジネスとして実現させていく場合の具体的なアドバイスや改善点など様々なフィードバックが行われました。
発表会の後には交流時間が設けられ、学生たちは4日間の経験を振り返りながら楽しい時間を過ごしていました!
LANDサークルの学生たちにとっては、他大学との連携を通じて新たな視点や学びを得るための初の試みであり、iU大学の学生のほとんどは、十勝地域を初めて訪れる新鮮な体験でした。このイベントは、双方の学生にとって、起業家精神やビジネススキルを磨き、新しい視点を得るという点で非常に有意義なものとなったと思います。
学生たちは、この4日間でただ技術を学ぶだけでなく、人とのつながりや地域への理解を深めることで、より大きな学びを得ることができたと思います。これらの経験は、彼らの未来の活動にとって大きな糧となるでしょう。
彼らが次にどんな一歩を踏み出すのか、その成長に期待しています!