1月29日に実施された「十勝起業家磨き上げ事業Vol.4」のレポートをお届けします!
「十勝起業家磨き上げ事業 十勝×神奈川ビジネス交流会」とは
とかち財団と旧起業家支援財団(神奈川県)の合併に伴い、2018年より始まったビジネス交流会。旧起業家支援財団の起業家・経営者が主なメンバーである「十勝起業家支援チーム」が十勝の起業家に向け、事業創発の後押しや経営課題解決のためのアドバイス、人的ネットワーク構築を支援するなどし、十勝ビジネスの加速化を目指す取り組み。
2018年のスタート以来、十勝と首都圏で実施されてきた本会。昨年10月の東京開催に続き4回目となった今回は、とかち財団が運営するLANDに35名が集まりました。
「十勝起業家支援チーム」の出席者は、以下の通りです。
●十勝の起業家支援チーム(順不同)
(株)アルプス技研 代表取締役社長 今村篤さん
(株)アルプス技研 常務取締役 渡邉信之さん
(株)TNPパートナーズ 代表取締役社長 呉雅俊さん
(株)ピーバンドットコム 代表取締役 田坂正樹さん
司会進行は、とかち財団 専務理事の小池さん。同財団の長澤理事長が主催者挨拶を行いました。
「この後に始まる発表は、十勝にとって大変有益な内容になると感じています。また、この機会に全国展開している方々に十勝を見ていただきたいですし、地域の枠を越えた連携の輪が広がり、十勝ビジネスの拡大につながることを期待しています」
(一社)Ag Venture Lab 代表理事 荻野浩輝さん
JR東京駅から徒歩10分の大手町に本拠を構える(一社)Ag Venture Lab。JAグループ全国8連(農中、全農、全共連、全中、全厚連、農協観光、家の光、農業新聞)が合同で開設・運営しています。
その成り立ちから、最優先事項は食料自給率の低下や耕作放棄地の増加といった社会課題の解決。農林水産省をはじめとする国内の行政機関、大学、企業、あるいは海外と連携し、Ag Tech(農林水産業の高度化と効率化)、Fin Tech(バンキングサービスの高度化と効率化)、Life Tech(暮らしサポートの充実)、Food Tech(食の安全性確保とバリューチェーン革新)、地方創生(都市と地方をつなぐ)に取り組んでいるそうです。
Labには、コワーキングスペースやディスカッションスペースなどがあり、全国から毎月約1,000人が集まるのだとか。訪れるだけでインスピレーションを得られる環境を提供しつつ、研修やセミナーの企画・運営を行っているそうです。
このような活動を通して、技術やアイデアを持つスタートアップ企業と意欲的な生産者との出会いを創出。パートナー企業(小売、食品、IT・通信など)と共に起業家の支援を行いながら、業界の境目を書き換え、オープンイノベーションを誘発する場を設けているとのこと。
荻野さん「JAグループとしての役割を果たしたいと考えています。社会課題解決のためには、起業家がもっと必要です」
(株)アクセルスペース 事業開発・営業グループ 後藤綾児さん
東京・日本橋に本社を置く(株)アクセルスペース。超小型人工衛星を活用した宇宙ビジネスを展開するベンチャー企業です。2008年の設立以降、超小型人工衛星の設計・製造・運用、画像データの販売、解析データの提供などを行っています。
同社はこれまで、世界初の民間気象衛星「WNISAT-1(2013年打ち上げ)」や、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が初めてベンチャー企業に製造を委託した衛星「RAPIS-1」を開発。打ち上げ後の運用も担当しているのだとか。
2022年、数十機の超小型人工衛星「GRUS(100kg/600×600×800mm)」からなる地球観測網「Axel Globe」の完成を予定している同社。2018年に最初の「GRUS」、2020年に追加で4機の打ち上げを行ったとのこと。
打ち上げられた「GRUS」は、1日1回、地球上のあらゆる場所から人間が経済活動を行う領域を撮影し、データを取得・蓄積。このようにして得られたデータから土地被覆分類や物体検出を行い、都市計画や産業に役立つ情報を提供するそうです。様々な分野での活用が想定されますが、森林の管理などでその真価を発揮すると期待されているのだとか。
後藤さん「ブラジルやインドネシアなど、森林資源が豊富な国で特にお役に立てると考えています」
マーケットの拡大を図るべく、海外進出を検討しているとのこと。
(株)VETELL 代表取締役CEO 池田哲平さん
畜産デジタルインフラ「VETELL」を活用し、畜産・酪農の生産性向上を目指している(株)VETELL。獣医師でもある池田さんが、代表取締役CEOを務めています。
農家戸数及び農業従事者が減少している昨今は、1戸あたりの飼養頭数が増加。少人数で多数の牛の健康管理を行う必要がある中で、牧場で記録された情報は共有されず、獣医師の診療に活かされていないのが現状なのだとか。そこで同社は、現状から予測される疾病の増加・収益低下を回避し、生産性向上・収益向上を実現させるため、生産者と獣医師が情報を共有する電子カルテ「VETELL」の普及に取り組んでいるそうです。
「VETELL」の有効活用において特に重要なのは、「餌の摂取量」と「治療データ」の情報。体調の変化が表れやすい「餌の摂取量」の記録は、疾病予防と早期の治療につながり、症状と診療内容を記録した「治療データ」は、診断精度を向上させ、効果的な治療を可能にするとのこと。今後は、業界全体に向けた研究会・協議会を立ち上げ、市場拡大を目指すのだとか。
池田さん「生産性向上の実現と同時に、ゆとりのある幸せな毎日を提供したいと考えています」
(株)アルプス技研 代表取締役社長 今村篤さん:発表の中で出た「マインドチェンジ」は、重要なキーワードだと思います。ユーザーに刺さるポイントを掴んだ上で、提案すると良いでしょう。
(株)アルプス技研 常務取締役 渡邉信之さん:ユーザーが必要性を感じていることに応えられたら、共感を得られます。料金設定についても、ユーザー視点で見直すと普及する可能性が高いと思います。
(株)TNPパートナーズ 代表取締役社長 呉雅俊さん:現状を分析し、障壁を見極めることが大切です。そして、つながる人々と何を享受できるのかについて、深掘りしていただきたいと思います。
(株)ピーバンドットコム 代表取締役 田坂正樹さん:見ていて気持ちの良いプレゼンテーションでした。活用されてこなかったデータを使うことで、新しい世界が生まれると思います。
質疑応答が活発に行われ、人数以上の熱気を感じた本会!地域の枠を越えた人と人とのつながりが、事業と起業家を育て、延いては地域のあり方に影響を与えるのだと感じました。