7月31日に実施された「十勝人チャレンジ支援事業報告会」のレポートをお届けします!
「十勝人チャレンジ支援事業」とは
十勝の産業に携わる個人またはグループに対し、国内外での研修・調査研究等の必要経費を補助する人材育成事業。フードバレーとかち推進協議会が同事業を開始した2013年度以降、十勝の産業発展に寄与する人材を数多く輩出している。2018年度より、とかち財団がその運営を引き継ぎ、同財団が実施する「十勝ビジネス支援プロジェクト」の取り組みのひとつとなった。詳細はこちら <十勝人チャレンジ支援事業 特設ページ>
本会では、2018年度の採択者であり“とかち財団が送り出した”第1期生が、対象地域で行った調査研究等の内容とその後の活動報告、今後の展望について発表します。
うだるような暑さとなったこの日。正式なオープンを数日後に控えた同財団運営の事業創発拠点「LAND」に、関係者約40名が集まりました。
選考委員を務めたOB・OGの姿に、本事業が積み上げてきたものを感じます!
同財団の飛川さんより、開会の挨拶が行なわれます。
本事業の主催者、同財団の長澤理事長から本会への期待が語られました。
そして、いよいよ発表が始まります!
人参・じゃがいもなどの根菜類を自社栽培する他、作業受託も行う河田さん。農業機械の維持や人件費といった生産コストが上昇する中で、高収益が見込める南米原産のスーパーフード「キヌア」に着目したのだとか。国内での大規模栽培の前例がなく、国内には競合が存在しない「国産キヌア」。栽培ノウハウと種子を求めて本事業を活用し、キヌア栽培の先進地であるニュージーランド、イギリス、オランダを視察したそうです。オランダでは、有望な品種のライセンスを持つ企業を訪問して種子を入手。帰国後に十勝でテスト栽培を始めたところ、順調な生育を見せているのだとか。まもなく行われる「十勝産キヌア」の初収穫を前に、品種登録、GLOBALG.A.P認証取得、販売に向けての準備等を進めているそうです。今後は、生産ネットワークを作って規模を拡大し、新たな高収益作物の導入や設備投資等にも取り組む予定とのこと。
「将来は、スタッフの通年雇用が可能な労働環境を整えつつ、十勝に高収益作物を取り扱う生産者を増やしたいと考えています」
2016年度からの3年間、帯広市の地域おこし協力隊を務めた山田さんは、任期終了後に「Tokachi Friend Ship」を設立。外国人技能実習制度で来日中の外国人実習生と日本人の交流の場を設けたり、生活相談に乗ったりしているのだとか。このような活動を通して得た情報や、台湾・韓国といった受け入れ先が人気を集めている現状を踏まえ、“外国人材に選ばれる環境を十勝に作ること”こそが、人手不足が深刻な地域産業の将来を左右する鍵になると確信。外国人目線で滞在環境を向上させるため、ベトナムの行政・企業・個人にヒアリングを実施すべく、本事業を活用したそうです。その結果、大家族で育ったベトナムの若者は1人暮らしを寂しいと感じること、100万円以上の借金を抱えて来日する実習生の多くが、貯金できる環境(賃金の高い大都市への滞在等)を希望していることが判明。今後は、十勝管内の空き家を活用した「不動産賃貸業」等に取り組み、外国人材が十勝での滞在にメリットを感じられる環境を整えていくそうです。
「外国人材が希望を持てる環境を作ります」
竹中さんは小麦収穫の佳境で欠席。とかち財団の浜田さんが代理を務めます。
小麦や豆類、西洋野菜を生産している竹中さんは、フレンチのシェフとの出会いを機に“フレンチ界の3大野菜”根セロリ、リーキ、ホワイトアスパラの生産体制を整えることを目標に掲げたのだとか。ところが、「ホワイトアスパラ」栽培には大きな壁が立ちはだかったのだそうです。それは、グリーンアスパラの種子を使用する既存の方法では、根強いニーズのある“太い”ホワイトアスパラが栽培できないということ。そして、手作業による収穫がネックとなり、大規模化が難しいということ。そこで、専用の種子を使用したホワイトアスパラの大規模栽培を実現すべく、本事業を活用。ドイツとオランダの種子会社、生産者、農機具メーカー等を訪問し、ヨーロッパスタイルの生産技術や、機械収穫の実態を調査したそうです。現地で入手した種子は、帰国後に播種。3年後の収穫を予定しているのだとか。
「日本で唯一のホワイトアスパラの大規模生産基盤を確立します」
佐野大祐(佐野産業)、佐々木昭彦(宮口産業)、福田幸一(三共木材)、菅原智美(外田組)、瀬上陽平(瀬上製材所)、木下真利(木下林業)、木村祥悟(木村建設)、越後谷勇樹(E-Design)、印牧ユミ(足寄森林組合)、内海泰弘(九州大学)、北海道庁職員2名、足寄町役場職員3名
林業の衰退とともに、川上=林業家(植林・伐採)、川中=製材所(加工)、川下=大工(建設)のつながりが失われつつある中、川上から川下までの連携を強化し、林業・林産業の振興(安全で儲かる林業、付加価値の高い製品を生み出す林産業)を通して地域を活性化すべく、産学官のメンバーが集結。「とかち森林Lab」を立ち上げたそうです。そして、北海道とほぼ同じ面積で森林資源を小規模循環させているオーストリアに学ぶため、本事業を活用。現地では、環境保全を最優先して燃料を選択する住民の高い意識に衝撃を受けつつ、チェンソー作業の安全確保への取り組みや、破砕処理だけを施したチップの利用事例を目の当たりにし、意義深い視察となったのだとか。帰国後、町民向けの成果報告会を実施。今後は、造林・造材作業時に発生する未利用資源「残材」を活用した「木質燃料」の製造を目指すそうです。
「地域の森林資源を活用して、山村地域の持続的発展を目指します」
こうして、すべての発表が終了。とかち財団の理事であり㈱アルプス技研の創業者 最高顧問の松井会長から、総評がありました。
「採算が取れなくてもやるのか?ビジネスとしてやるのか?その区別はできているでしょうか?発表の中に、収支のグラフが見当たらなかったことが残念でした。事業を成り立たせるには、けじめを付けなければなりません。経済のないビジネスはありません」
最後に、今年度の採択者が紹介され、閉会となりました。
左から、ハッピネスデーリィ(池田町)の千葉華代さん、田畑正仁さん(帯広市)、中札内村地域おこし協力隊/観光振興プロデューサー(中札内村)の梶山千裕さん、梶山智大さん
※GuestHouseぎまんち(足寄町)の儀間芙沙子さんは欠席。
●2019年度の採択結果 詳細はこちら <「十勝人チャレンジ支援事業」の採択事業者が決定しました!>
今年度は、どんな学びがどのような形で十勝の産業を発展させていくのか…今から楽しみです!