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令和6年度とかち財団学生起業家育成奨学金(LAND奨学金)採択者活動報告のレポートをお届けします!

2024年12月に開催された十勝発学生ビジネスイベント『TOMOSHIBI-灯し火-』で、令和6年度とかち財団学生起業家育成奨学金(通称:LAND奨学金)採択者の活動報告が行われました!

LAND奨学金とは


LAND奨学金とは、全国の起業を目指す学生を対象とした返済不要の奨学金事業です。十勝の地域経済の発展に寄与する次世代の起業家人材の発掘および学生起業家の輩出を目的に実施されており、事業創発人材育成および奨学金給付を行います。

これまで過去7年間で33名の学生が採択されてきたこの事業では毎年7月から11月の5ヶ月間に月4万円を支給し、さらにビジネスプランの磨き上げブログラムの実施など、事業実現のためのサポートを行います。

今年度も外部審査委員による選考を実施し、起業意欲や熱意、地域関連性、ビジネスプランの計画性や実現性などの観点で審査を行い、採択された学生2名が発表を行いました。

令和6年度LAND奨学金採択者 活動報告


今年度のLAND奨学金採択者はこの5ヶ月間でどのような活動を行い、どのような変化があったのか。採択者2名による発表が行われます。


十勝からガーナへ農業の力で未来を切り拓く


1人目の発表者は、帯広畜産大学3年の木原淳兵さんです。LAND奨学金採択時は、ガーナの「シアの木」から採取される「シアバター」を輸入し、そのシアバターと畜大牛乳を配合したハンドクリームの開発・製造販売の事業化を目指していた木原さんは、この5ヶ月間どのような活動をしてきたのでしょうか。いよいよ発表がスタートです!

帯広畜産大学3年 木原淳兵さん


「私にはある夢があります!」と熱意溢れる言葉でスタートした木原さんは、現在、アフリカのガーナ(特に北部)の食糧問題に着目しています。木原さんは高校時代、アフガニスタンで活躍した日本人医師中村哲さんの活動に感銘を受け、世界が抱える食糧問題に興味を持ちました。そして、日本一の農業大国である十勝で農業を学びたいと考え、福岡から帯広畜産大学に進学しました。

帯広畜産大学で開発経済学を専攻し勉学に励む日々のなかで、同校に留学しているガーナ人の友人との出会いが木原さんの心を大きく動かします。ガーナのシアバターを生産している農家が適正な価格で取引がされず貧困で苦しんでいるという話を聞いた木原さんは、ガーナの農家の調査を始め、ハンドクリームや化粧水の原料として使われるシアバターを日本に適正な価格で輸入しシアバターと畜大牛乳を配合したハンドクリームの開発・製造販売を目指しLAND奨学金の採択を受けます。
そして、木原さんは、2024年8月にガーナへ渡航し現地調査を行いましたがそこで目にしたのは、木原さんの想像を超える理不尽な現状でした。

ガーナ北部の現地で出会ったのは兄弟家族のため毎日学校の後に労働をしている14歳の少年や、干魃の影響で1日1食しか食べることのできない16歳の少女、他にも栄養失調で亡くなる方や、家族の生活のために売春をしたり人身売買などが日常的に起きたりしている現実に、ただ言葉を失うばかりだったと言います。

これらの抱える問題は国全体の貧困に起因しており、シアバターの事業だけでは問題の解決は難しいと考えた木原さんは、現地の農作物を使った、より広範囲に波及効果をもたらすビジネスを起こすことを決意しました。
ガーナ北部が貧困に陥った原因として、干ばつによる農作物の不作や狭すぎる耕地面積、肥料の質など多くの問題点が挙げられるといい、なかでも生産物の販路が確立されていないことが一番の問題点だと分析します。一般的な小規模農家は地元の小さなマーケットにしか販路を持っておらず、市場が小さいため、収入面でも限界があります。
そこで、木原氏はガーナ北部の農家から相場よりも高い価格で農作物を買取り、ガーナの都市市場へ販売するモデルの構築を目指しています。
ガーナ都市部の消費者から懸念されている農作物の安全性を担保しながら、都市市場へ販路を拡大し、ガーナ北部の貧困問題の解決に向け取り組んでいきたいと意欲を見せます。将来的には、ガーナ北部の世帯収入が安定的に上がり、家族全員が十分な食事が摂れる世帯の増加を実現させます。

そして、今後世界最大の市場となると言われているアフリカに十勝の品種改良技術や農業機械の技術を継承することで、十勝とアフリカの架け橋になりたいと想いを伝えます。その第一歩として、木原さんは、2025年4月から大学を休学し数年間ガーナへ渡る予定です。

最後に、生まれた場所や性別によりどんなに頑張っても抜け出せない理不尽な現実があってはならないと語気を強め、「誰もが同じスタートラインに立てる社会を作るソーシャルビジネスを目指したい」と熱い言葉で発表を締めくくりました。


記録を2Dから3Dへ 技術が導く未来の当たり前


2人目の発表者は北海道大学大学院情報科学研究科修士1年の齊藤さん。齊藤さんは、北大主催のビジネスプログラム『北海道Society5.0みらい創造ワークショップ』というプログラムの卒業生で、本奨学金の採択前には北海道士幌町の道の駅「ピア21しほろ」にVR空間を作成した実力者。奨学金の採択を受け、この5ヶ月間でどのような活動をされてきたのか注目が集まります!

北海道大学情報科学院 修士1年 齊藤成輝さん


齊藤さんは、3D技術を活かしたバーチャル空間の開発に力を入れています。広大な土地である北海道では移動に時間がかかる場合が多いため、現実世界をそのままバーチャル空間に再現することができる3D技術を使うことで遠隔で離れた地域の魅力発信や観光促進に貢献できないかと考え、技術の実用的な開発を目指し活動してきました。

自身が十勝を訪れた際、地元の人々の温かみや地域の密着感を強く感じた齊藤さんは、本来十勝に足を運ばないと感じられないものが、バーチャル空間だとどこに居てもそのまま余すことなく伝えられるのでは考え、バーチャル空間による十勝の魅力発信に貢献したいという想いでLAND奨学金に応募しました。

LAND奨学金に採択され、実現に向け取り組みをスタートさせた齊藤さんは、関連企業にヒアリングに訪れた際に『課題解決型』のサービスではなく『価値提案型』のサービス展開の難しさに直面します。バーチャル空間を使っての魅力発信というのは、新しい技術だからこそ顕在化していないニーズを掘り起こさなければならないため、その難しさが大きな課題であったと言います。

そこで、新たな方向性での挑戦を決意しました。3D技術を使った課題解決型ビジネスの実現へ方向性を変え、積極的に3D技術関連のイベントに参加した齊藤さんは、企業を対象として、作業工程のマニュアルや機械などの取扱説明書などを3D空間上でも表示し、現実世界と照らし合わせながらマニュアル文書等がみられる『マニュアル文書の3D化』や、遠方の工場など、移動コストがかかる場所でも、3D空間で擬似体験を可能にし、企業研修などを行うことができる『遠方の3D化によるバーチャル研修の実現』など、その可能性を模索します。
そんなときにいただいた『撮影当時の道の駅がバーチャル空間に残り続けることが将来的にはデジタルアーカイブとして価値を生むのではないか』というフィードバックから、『3D技術には時間を超えて人々の思い出の空間や瞬間を再体験できる価値があるのではないか』と考えます。

『自身の思い出深い場所に立ち、VRグラスをつけると20年後でも100年後でも当時の景色が広がり記憶が蘇る』そんな3Dバーチャル空間の実現を目指し、齊藤さんは今、奮闘しています。また、空間に留まらず『人物』をデジタルアーカイブとして残すことで『過去の自分や大切な人に将来また会うことができる。』そんな未来の創造を目指します。

最後に、LAND奨学金の採択者としての活動を通して色々な壁にぶつかりながら3D技術の『時間を超える』という価値に気がつくことができたと言い「今後はこれまで当たり前であった写真や動画での思い出の記録を、3Dでの記録が未来の当たり前になることを目指し、社会に向けて発信していきたい」と、さらなる挑戦に向け想いを述べます。

とかち財団理事長 金山さんによる講評



起業意欲が高く、実現に向け活動意欲のある学生を支援していくことが本奨学金事業の目的。2名の採択者がこの5ヶ月間でビジネスプランをより深め、具体的にブラッシュアップした意欲的な姿勢から、目的が十分に達成されたとして、今後は事業の実現に向けて取り組んでいってほしいとエールが送られます。

LANDでは、次年度もLAND奨学金事業を実施予定とのことですので、先輩の背中に続く熱意ある学生は要チェックです!!


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