1952年(昭和27年)、十勝の食品産業を支える大手企業の機械器具修繕工場として創業。大型機械の整備といったメンテナンス業務を柱に、大型タンク、鋼構造物、ステンレス製品製作などを行う。
2010年より、環境・エネルギー分野であるバイオマス※1バーナー事業を進め、木質ペレット※2を燃焼させるペレットボイラーを開発。その6年後、ペレット化していない農業残渣※3の燃焼が可能な「小型バイオマスバーナー」の開発に成功した。
2018年3月、経済産業省中小企業庁「はばたく中小企業・小規模事業者300社(需要獲得部門)」に選定され、同年10月、北海道「北海道新技術新製品開発賞(ものづくり部門)」で、最高賞である大賞を受賞。北海道「地域経済牽引企業」に認定された。
※1 バイオマス:再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの。(『バイオマス・ニッポン総合戦略』)
※2 ペレット:円筒形に圧縮成形した小粒の固形燃料。木質ペレットには、乾燥した木材を細粉したものが使われる。
※3 農業残渣(のうぎょうざんさ):農産物の収穫時に発生する、茎葉や野菜くずなどの非収穫部。
㈱武田鉄工所 環境・循環エネルギー室室長の佐藤寿樹さんは、岡山県生まれの帯広育ち。大学での研究や製鉄会社でのエンジニア経験などを活かし、「小型バイオマスバーナー」の開発に携わる。生物生産学博士。
佐藤さん: 日本の食料自給率は、カロリーベースで38%です。一方、食料自給率1,200%を誇る十勝の農業現場では、年間73万tもの農業残渣が発生しています。しかしながら、堆肥化などで利用される農業残渣は、全体の6割以下という現状です。つまり、4割以上が未利用資源であり、その処理費用は89億円(30円/㎏と仮定)にも上ると試算しています。また、未利用の農業残渣を熱利用(灯油代替換算)する場合、106億円(100円/ℓと仮定)相当となり、北海道全体では、その5~6倍の経済効果があると見込んでいます。
原発停止後、エネルギー自給率が8.3%にまで落ち込んだ日本において、農業地帯である十勝が農業残渣を活用し、自給可能なエネルギー源を確保する意義は大きいと考えています。このような背景から、低炭素循環型社会※4の実現に向けて「小型バイオマスバーナー」の開発を進めてまいりました。
※4 低炭素循環型社会:地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の排出を大幅に削減する社会。
小型バイオマスバーナー TKD-SBU02:全長3.2m、高さ2.2m、幅0.8m。ユニック車1台で移動可能。燃料の消費量は1時間に20㎏程度。50mのビニールハウスを冬期間暖房できるほどの温風(40~60℃)、または温水をつくり出すことできる。排出された灰は、肥料や融雪炭として利用できる。特許出願中。
佐藤さん:本製品最大の特徴は、豆類くずや小麦くずなどの農業残渣をペレット化せずに燃焼させられることです。灰分(不燃性の鉱物質)を多く含む農業残渣の発熱量は、木質ペレットより2~3割低く、木質ペレット用のボイラーで燃焼させるのは困難でした。また、炉が固定された木質ペレット用のボイラーで農業残渣を燃焼させた場合、灰やクリンカ(大きく成長して固まる物質)が炉内に溜まり、燃焼を阻害します。これらの課題を解決すべく、本製品では回転炉を採用し、独自の送風技術を開発しました。回転炉は、連続回転ではなく間欠回転(回転と停止を繰り返す回転)で稼働させています。そこへ送風機で旋回流を送り込み、燃焼の立ち上がりを安定化させることができました。クリンカは、炉の回転で成長が食い止められ灰とともに自動的に排出されるため、燃焼の阻害要因とはなりません。
佐藤さん:バイオマスの利用は、手間をかけず移動させない方法こそが低コスト且つ効率的です。物質循環の観点からも、地域に還元することに環境的な価値があると考えています。
小型化した本製品は、移動可能であり多用途利用を想定しています。地域の課題を解決する成功事例を作り、「大規模集中型」ではなく「小規模分散型」のモデルとなれば、循環型社会の実現につながると期待しています。
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