2022年11月26日、帯広駅前のスタートアップ支援スペース「LAND」にて「令和4年度 LAND 奨学金最終報告会」が開催されました。
「LAND奨学金」とかち財団学生起業家育成奨学金事業とは
本事業は十勝の産業振興の発展に寄与することを目的とし、将来起業を目指す学生に奨学金を給付するものです。今後本事業を通じて企業家精神の習得及びビジネスプランの磨き上げを図り、起業する学生を十勝で輩出することを目指します。2022年の実施で5年目。
はじめに、とかち財団・金山理事長から「変化の大きい時代、企業創業、事業創発の精神が非常に注目されている。本プログラムで得た貴重な経験が糧となり、皆さんが将来起業する際に役立ってくれればと願っています」と開会の挨拶がありました。この日の司会進行は、とかち財団・山口さんが務めます。
左からとかち財団・金山理事長(ZOOM参加)、司会の同・山口さん
今年6月に事業採択後5ヵ月に渡り、どのような活動をしてきたのかを、自身の成長を織り交ぜて3名の採択者から報告して頂きます。
公共交通機関や自転車等を使用している高校生・大学生などをターゲットに、タクシーを使用し、行動範囲を広げ、地域のお店に足を運んでもらうためのサービスを展開する。
現在、札幌市在住の一色 健さんは、出身地の帯広市が好きで、社会的課題解決に興味を持つ大学4年生。大学生のうちに何か自分の力で挑戦し形に残したいと、当事業に応募。
活動内容は、これまで自身が経験してきた、交通の不便さによって若い人が自由に移動できないという帯広市の地域課題に注目。そこで若い人が使える「定額制タクシー」というビジネスモデルを考案。若い人が自由に移動できる環境を作り、商業施設に若い人が訪れ地域を活性化させるのが目的。
自ら立てた仮説に基づき、実際に利用者(学生)や事業者(バス会社/タクシー会社)にヒアリングした結果「課題ではあるが、お金を払って解決する程の痛みではない」という結論に達した。そして、本当にニーズがあるか、交通事故などのリスク対応の難しさ、実証実験を行う際の資金調達など、調べれば調べるほど、次々と障壁が立ちはだかった。
そこからヒアリング結果を踏まえて「学生の冬季アルバイトの交通手段」にターゲットを絞り、雪道でも走ることのできる「ファットバイク」のレンタルサービスを検討するも、安全面の問題で実現はしなかった。
残念ながら活動期間中に、新しい交通手段を提供するというビジネスアイディアを生み出すことができなかったが、今後はプランをピボットして、既存の交通手段を利用しやすくするサービス(アプリ)を作って地域を活性化するプランを考えていきたい思う。
「たくさんのヒアリングの機会を通して、自分の知らない業界について知ることができた。活動は困難の連続だったが、ただ大学に行っているだけでは得られないたくさんの事が経験できた。将来、この経験を通じて十勝に貢献できる人間になりたい!」
この日、会場に来ていた参加者、オンラインで報告会の様子を視聴している方から、質問や感想などメッセージを頂きました。
「交通の面に着目したプランがとても面白かった。たとえ、実現が難しくても良い経験になったと思う」
「スタートアップでは、最初に考えたソリューションに固執するあまり、失敗してしまうことがよくある。その点、仮説を繰り返しながらピボットを繰り返しているのは良かったと思う」
障がい者、健常者が自ら専門分野についてワークショップやイベントを開催できるよう支援を行う。また、健常者と障がい者が関わりあえるイベントを主催、開催。障がい者を雇用する企業・法人に向けた「体験型研修プログラム」の提供する。
家族に障がい者がいる環境で育ったが、自分と世間の「障がい者」という言葉の認識に大きな差があることに気付いた。障害があることを隠したり、健常者と障がい者が区別されている現状の課題解決として、障がい者と関わるためのファーストステップとなる「体験型の研修プログラム」を提供することを目標にした。また、活動はボランティアではなく、障がい者の雇用が市場(ビジネス)として有効であるということを、実践し世間に広めたい。
まず、障がい者福祉の活動者(障がい者支援センター他)へのヒアリング、実際に行われている体験イベントにも参加し、帯広市の現状を把握。自らの仮説を検証するために行った「体験型プログラム」の実証実験では、参加者から「既存の研修とは全く違う。実践的でわかりやすい」などの評価を得ることができた。今後の活動は、障がい者雇用に消極的な企業へのヒアリングや、幅広い障がい特性をもつ障がい者と作り上げるプログラムを作っていきたい。
元々人前で意見を話すことが苦手だったが、少しずつ自分の言葉で話せるようになった。LAND奨学金事業の活動を発信していると、他の活動をしている人や仲間に出会うことができた。また、活動中に重度訪問介護従事者の資格を取得しホームヘルパーのアルバイトを始めることができた。
「障がい者を健常者に合わせていくのではなく、障がい者個人の個性を活かしていくというのは新しい。企業の人事担当が一緒に取り組めるワークショップがあると良い」
「仮説の検証をするためのヒアリングは、身近な関係者だけではなく、国内外問わず近い課題にコミットしているビジネスをベンチマークとして分析していくのも良い」
「(佐野さんの)行動力が凄い。若い方が地域のために考えて行動してくれるのはとても嬉しい。これからも応援したい」
十勝管内の「色や見た目が悪いが味は変わらない果物」の規格外品を使用し、高付加価値をつけたノンアルコールリキュールを開発・販売する。
農家さんの知名度向上と経済的に助けたいとの想いで、採択時のビジネスプランは「規格外品の果物を使ってリキュールを作りたい」というプランだった。実際にハスカップ園で生産者にヒアリングを実施。経営面のフィードバックをもらうために大学でピッチをして経験を積んだ。そこでリキュールは大量ロット生産のため多額の初期費用がかかる、たとえ規格外品を使ったとしても原価が高くついてしまい、農家さんに貢献/還元できないことがわかった。
ノンアルコールリキュールを作りたいという自身の想いはあるが、農家さんを助けるためなら「リキュールにこだわる必要はない」と考え、LAND奨学金事業の採択前から取り組んでいた、AI技術(画像診断)を使ったさくらんぼの選別デバイス「Blossom」の事業にピボットすることにした。
(さくらんぼの選別デバイス「Blossom」)
現在、中小規模のさくらんぼ農家の多くは、穴の開いた「判別シート」に1つずつサクランボを通しサイズ判定をしているのが現状。画像でサイズ判定する「Blossom」を使用すれば、作業は1/3の時間で行うことができる。ただ、市場が小さい事と、純利益が低いことを考え、現在はビジネスプランをブラッシュアップしている段階。将来的には1つの果物にこだわらず、他の形状選別する果物や野菜にも対応できるようにしていきたい!
関わってくれたメンターの方々に「リーンキャンバス」などビジネスの基礎的なことを教えてもらった。最初は緊張して自分の思っていることを上手く話すことができなかったが、ピッチをする機会をたくさん提供してもらったので、次第に上手くできるようになった。一番良かったことは同じ目標を持った仲間たちとの出会いだった。今後は「北海道起業家甲子園2022」(ICTビジネスプランコンテスト/総務省)に出場する予定。
「農家さんが便利だと思うデバイスであれば、口コミでも売れると思う。期待しています」
最後にとかち財団・執行役員事務局長・森川さんから、「皆さんには、若いからこそ感じることができる価値、ニーズ、痛みがあると思う。プログラムはこれで終わってしまうが、これからもたくさんの人と出会って、もっともっと繋がりを広げていって欲しいと思う」と激励の挨拶で報告会の幕が閉じました。
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