十勝Z団(トカチゼットダン)

公益財団法人とかち財団

SNSSNSでも最新情報を更新中しています!
Youtube Facebook

2022年9月29日に帯広市で開催された「十勝アグリ&フードサミット」の様子をレポート!
後半の記事では、4日間にわたって十勝の農業関連企業や生産者を視察するプログラム「トカチダネ」を体験した全国の大学生たちによる「学生セッション」と、十勝の一次産業や食産業に携わるパネラーが十勝の農林漁食に関するお題に対して、各々の考え・想い・取り組みなどを大喜利形式で回答したトークセッション「農林漁食の未来がわかる!十勝アグリ&フード大喜利!」を紹介。個性あふれるイベントに会場は最高潮の盛り上がりとなりました!

関連レポートはこちら

「十勝アグリ&フードサミット」とは

地域内外の参加者同士の交流から事業創発を促進し、農業を中心とした「一次産業」と「食」の持続的な未来を共創することを目的とした、とかち財団主催のイベント。「アグリ&フード2030未来共創」をテーマに、国内における食の一大産地である十勝から、イノベーションを生み出す未来共創が促進されることを目指している。

学生セッション「トカチダネ~大学生が見た!今の十勝・これからの十勝!」

北は北海道から南は九州まで、全国6大学から約30名の学生が十勝に集結しました!
集まった大学生は皆、農業系サークル等に所属する農業への関心が高い学生ばかり。今回はイベント直前の4日間で十勝の農業関連企業や生産者を視察するプログラム「トカチダネ」に参加したそうです。 このセッションでは、各団体の日頃の活動を紹介したあと「トカチダネ」を体験して感じた事についてチームごとに発表しました。

登壇者学生:北海道大学「ほくだい畑」、筑波大学「農業サークルのうりんむら」、東京大学「東大むら塾」、立命館大学「学生団体カノール」、東海大学「阿蘇援農コミュニティプロジェクト」、宮崎大学「地域資源創成学部・学生起業家」
司会: tokachi feald action LAb 山内さん、とかち財団 LAND 山口さん

各団体による活動紹介

左から、北海道大学 武部さん、筑波大学 鴻巣さん、東京大学 金出さん

北海道大学「ほくだい畑」 武部さん
「札幌市内のキャンパス内で、畑作を中心に農作業を行なっている、『食と農』について考えるサークルです。栽培する野菜は20品目以上、土地が狭いので少量になるものの、いろいろな種類の野菜を栽培しています。『食の上流から下流まで』というスローガンを掲げ、上流『生産』から下流『消費』までを一貫して行っています。単に作って食べるだけでなく、比較実験を通じた栽培方法の検証や、他部の学生を招いた栄養についての勉強など、活動は多岐に渡ります。農学部や工学部をはじめ、文系・理系、留学生をまじえた100名以上のメンバーがいます」

筑波大学「農業サークルのうりんむら」 鴻巣さん
「大学近くの畑で野菜を育てたり、近隣地域の有機農業を行なっている農家さんのお手伝いをする活動が中心です。『のうりんむら』という名の通り、団体を村にたとえ、代表は村長、副代表は助役、メンバーは村民と呼ばれています。『村パーカー』といわれるサークルオリジナルのパーカーを着て作業することが多いです。現在96名の村民がさまざまなかたちで『のうりんむら』に関わっています」

東京大学「東大むら塾」 金出さん
「『農業化×地域おこし』で『村の未来を変える』をコンセプトに、主に千葉県富津市と福島県飯舘村で活動しています。特に拠点としている富津市の実態は十勝とはまったく違う状況で、農業規模が小規模で高齢化が進み、耕作放棄地が多く、獣害の被害も多く出ています。そのような中での活動の一例として、力を入れているのが2年目になるホップの栽培です。地元の高齢農家さんの畑の一角をお借りして栽培したホップを地元のビール醸造所に買っていただき、生ホップを使ったビールを昨年からブランド化しています。暖かい地域でも収穫できるようなホップの栽培を目指しています」

左から、立命館大学 中さん、東海大学 佐藤さん、宮崎大学 御沓さん、吉松さん(学生起業家)

立命館大学「学生団体カノール」 中さん
「学生と生産者をつなぐプラットフォームを運営しています。農業に新しい人との関わり方を提案することを目指し、学生が農業の現場に行ける仕組み作りをしています。具体的には、公式LINEアカウントを使い、生産者さんが人手が欲しい時に欲しい人数を、学生が行きたい時に行きたい農家さんのもとにワンクリックで行けるようなシステム作りをしています。活動のひとつとして行なっているのが『縁農(えんのう)』。一般に『援農(えんのう)』と表記されることが多いですが、私たちはご縁の『縁』を使って縁農と呼んでおり、その理由は、学生は労働力として行くのではなく、生産者さんや地域の方々との交流、ご縁を大切にしてほしいという思いからです。現在は全国10カ所ほどの農家さんに協力していただき『縁農』を行なっています」

東海大学「阿蘇援農コミュニティプロジェクト」 佐藤さん
「東海大学の中にあるチャレンジプロジェクトの1つで、人手不足に悩む農家さんのお手伝いを行う活動をしています。ただ、農家さんのお手伝いをするだけでなく農家さんの技術や知識を学ぶこと、学生からは農家さんへ労働力だけでなく、学生の元気や活力を与えることを目標にしています。そして学んだことを生かすために学生自らが畑をつくり作物の栽培に取り組んでいます。また、農作業だけでなく地域の発展に貢献するため、熊本県南阿蘇村で農家さんと学生のコミュニティをつくり学び合える環境を整えている所です」

宮崎大学「地域資源創成学部・学生起業家」 御沓さん、吉松さん
「私たちの学部は国内外の産業構造を総合的にとらえ、地域の社会や経済状況を分析し、市場開拓やリンケージ構築、企業支援などの提案を行うことで経済発展に貢献するための学習を行なっています。今回のプログラムに参加したメンバーは、農業に直接関わりのある人は少ないですが、学部で学んでいる経済学や社会学の視点から、十勝の現状や将来について議論を重ねました。参加した宮崎大学生のうち3名は学生でありながら起業家でもあり、それぞれ、障害児童福祉分野における情報共有アプリの開発、オンラインによる教育指導や人材派遣、VR素材の開発を行う企業を運営しています」

各団体の活動紹介の後は、いよいよ「トカチダネ」で感じたことの発表です。 トカチダネのプログラムでは、参加学生の所属に関係なく、「農業×稼ぐ」「農業×技術」「農業×環境」「農業×つながる」という、4つのチームに分かれて活動し、各チームのテーマに合わせてセッティングされたそれぞれ3つの企業や生産者を訪問したそうです。それぞれのチームの代表が「十勝の価値」「違和感」「可能性」について発表を行いました。

チームテーマ:「農業×稼ぐ」

訪問先

・株式会社山忠HD、ノベルズグループ、前田農産食品株式会社

「農業×稼ぐ」チーム代表 金出さん・東田さん
「『十価値(とかち)』ということで、私たちが感じた十勝の10の価値を紹介します。地域としての『①結束力』があり、『②世代交代』が進んでいて、『③循環型農業』に取り組み、農業関連の『④仕事が豊富』、『⑤ブランド力』があり、販売方法の選択肢が多く(⑥販路が豊富)、進んで『⑦最新技術』を取り入れ、規模が大きく(⑧大規模)、収入が高く(⑨高収入)、⑩作業効率が高いことが価値だと思います!
一方で、事業展開や事業拡大の高いポテンシャルを持っているのに、新しいチャレンジに積極的に踏み出す農家さんがまだまだ少ないという現状には違和感を感じました。また、実際に視察をするまでは、北海道は面積が広いので、活用できる土地も多いというイメージを持っていましたが、農地が空いてもすぐに買い手がついてしまい、実は新規農業者の参入が難しい面もあるのだと知りました。チャレンジ意欲の高い新規就農希望者と離農する方をマッチングする仕組みがあればより挑戦的な地域になるのではないかと思います」

チームテーマ:「農業×技術」

訪問先

スペースアグリ株式会社、カルビーポテト株式会社、株式会社農業情報設計社

「農業×技術」チーム代表 武部さん・吉松さん
「私たちは、プログラムを通して十勝の『土地』『技術』『ブランド』という3つの価値を強く感じました。1つめは、全国で有数の大規模農業が行える、広大で肥沃な土地があること。2つめは、まだ地域全体には広がっていないけれど、実際に導入が始まっていたり商業化されている十勝発の先進農業技術があること。そして3つめは、道外から来た人たちに十勝について聞くと、農業、酪農、お菓子のイメージが返ってくるという積み上げられた高い『ブランド力』です。これらは大きな価値ではないでしょうか。
特に興味深かったのは、農家さんが新しい技術を積極的には導入しないということです。これは、農家さんが技術を嫌っているわけではなくて、農家さんにとって大事なのは、技術が役に立つかどうか、使いやすいかどうかであって、ハイテクかローテクかでは判断していないということが印象に残りましたし、技術導入を進める際の課題になりそうだと思いました。技術者さんと農家さんの大切にしているポイントのズレを認識することで相互理解が進むのではないかと感じました。その為には技術者と農家さん、学生が集まるようなコミュニティ(LANDのような)や十勝アグリ&フードサミットのような場が重要だと思います」

チームテーマ:「農業×環境」

訪問先

株式会社土谷特殊農機具製作所、アグリシステム株式会社、鈴木牧場

「農業×環境」チーム代表 山中さん・望月さん
「訪問して感じたのは『十勝はとてもチャレンジしやすい環境』だということです。広大な土地があり、一戸あたりの農地面積が日本の平均の約21倍もあるので、従来の農業をやりながら新しい作物の栽培などに挑戦することができるというのは十勝ならではの強みではないでしょうか。また、農家さんと農協のつながりの強さにも驚きました。十勝では90%以上の農家が農協に加入していて、日本全国で見ても稀有な地域だと知りました。農協の手厚いサポートもチャレンジしやすい要因の一つです。何より、驚いたのは本州と比べて十勝の農家さんの『収入の高さと個人農家の多さ』に驚きました。高い収入があるので本州の農家よりもリスクを負ったチャレンジがしやすいという部分も強みだと思います。
今回私たちは、地域内で持続的に取り組める循環型農業のメリットを知りました。コスト面や肥料や飼料の安定供給の面でも海外の輸入に頼らないリスク回避の手段として有効だと思います。十勝でも循環型農業も取り入れていくと良いのではないでしょうか。2050年までに有機農業の割合を25%にするという国が立てた政策は、大規模農業では対応することが難しいと言われていますが、日本の食を引っ張っている存在である十勝だからこそ取り組んでほしいですし、これまでさまざまな食の課題にチャレンジしてきた十勝ならば達成できるのではないかと思いました」

チームテーマ:「農業×つながる」

訪問先

合同会社ピロロ企画、株式会社満寿屋商店、株式会社いただきますカンパニー

「農業×つながる」チーム代表 佐藤さん・納富さん
「十勝はとてもチャレンジしやすく、まわりが足を引っ張らずに応援してくれる土地であると知りました。また、地域を良くしようと考えている方が多く、その方々の多くに共通しているのは、他の地域のことを知っている方が多いということです。他地域から移住していたり、一回外に出て戻ってきた、みたいな方が多い印象でした。
十勝に感じた違和感は、十勝で生まれ育った人が十勝外、特に北海道の外に出たがらない点です。それは恐らく、地域が全体が豊かなことによるものだと思います。地域の中で全部足りているからこれでいいや、という気になるのではないでしょうか。案外十勝の人の方が十勝の魅力に気付いていない部分があると思います。その為には、一度、地域の外に出ることで、十勝の良さが見えてくると思います。そのきっかけとしてぜひ、私たち地域外の学生に会いに来てください!」

大学生が登壇するという事で来場者の注目も高かったこのセッションですが、地域外の学生の視点ならではの意見も飛び出し、セッションは大いに盛り上がりました。トカチダネのプログラムを運営した、tokachi field action Labの山内さんは「この発表がゴールではなく、スタートにしてほしい。今回の繋がりを縁に十勝をチャレンジの場にしてこれからも十勝と関わっていってほしい」とメッセージを送りました。

セッション3「農林漁食の未来がわかる!十勝アグリ&フード大喜利!」

農林漁業と食産業のプロ、総勢10名が登場し、大喜利を行ったこのセッション。とかち財団/LANDの高橋さん植田さんの司会のもと、来場者はスマホを使って、登壇者に答えてほしいお題を投票で選んだり、意見や感想を送ることで登壇者とコミュニケーションが取れる今までになかったスタイルのトークセッションでした。登壇者は大喜利形式で自分の考えを時に面白く、時に真剣に回答しました。

農業編

登壇者: 前田農産食品株式会社代表取締役社長 前田茂雄さん、有限会社コスモス 代表取締役 安藤智孝さん、株式会社坂根牧場 代表取締役 坂根遼太さん

自己紹介

前田さん
「本別町で120年、代々農業をやっています。穀物の生産、主にポップコーンの原料になるとうもろこしの栽培をしていますが、従業員の冬場の仕事を生み出すために、電子レンジで1分40秒くらいチンすれば食べられるポップコーンを作っています。みなさんの笑顔を畑から弾けさせたいと思っています」

安藤さん
「十勝清水コスモスファームの安藤です。私は清水町の肉牛(にくうし)の農家です。従来のホルスタインの薄利多売モデルから脱却するために、黒毛和牛の繁殖から肥育、輸出までという一貫したモデルに取り組んでいます」

坂根さん
「ロケットの町、大樹町にある坂根牧場の坂根です。私の牧場の特徴は、放牧酪農で、アニマウェルフェア畜産協会の認証を取得し動物にやさしい飼い方をしています。その牛乳を使った乳製品を『乳LIFE』というブランドで販売しています」

左から、坂根牧場 坂根さん、コスモス 安藤さん、前田農産食品 前田さん

農業のお題1:農業者には常識だけど、一般的には非常識。一体何?

坂根さん 回答:BBQやりがち
「何年か前に災害起き、十勝でブラックアウトが起きましたよね。みんな電気がなく不安だったと思いますが、十勝の農業者は家でとれるじゃがいもや、冷凍庫の肉を焼いて、ふつうにBBQをやっていました。SNSなどには載せませんが(笑)」

安藤さん 回答:和牛、めっちゃ増殖
「たぶん、皆さん知らないと思いますが、和牛は和牛だけから生まれるわけではないのです。和牛の受精卵を雌のホルスタインのお腹で移植し出産させると和牛が産まれるんです。私の牧場も、ホルスタインの、いわゆるスーパーマーケットで売っている手頃なお肉を大量生産していたんですが、最近和牛に切り換えました。これからは飼育しているホルスタインのお腹の中に和牛の受精卵を移植する酪農家さんが増えてどんどん和牛が増えるんじゃないでしょうか?」

前田さん 回答:アンパンマンは実は小麦の粒だった
「皆さんこれ、意識したことありますか? 正義の味方アンパンマンの顔になるパンはジャムおじさんが作っていますが、パンの原材料は小麦農家が作っているんです。我々がいないとアンパンマンは生まれないんです!」

2030年、小学生がなりたい職業第1位が農業者に!どうして?

安藤さん 回答:食=生きる、原点回帰が起こった
「2030年まであと7年程度ですが、7年で大きな変化があるとすれば災害のような大きなショックが起こるときじゃないかと思うんです。そうすると災害が起きたときの食料問題のリスクヘッジとして、各家庭の庭先で農業をやる方が人口の8割を超えるんじゃないかなと。すると小学生の8割が、自然と自分で何かを育てる経験をすることになって農業者がなりたい職業なるんじゃないかと思います」

前田さん 回答:通学が電気トラクターになる
「将来、トラクターは自動操縦になるはずです。小学生の通学が自転車や徒歩で学校に行くより、トラクターを使った方がよっぽど安全!ってことが十勝で起こるかもしれません。さらに、『◯◯ちゃんちがトラクター買ったらしいよ』『私も電気トラクターに乗りたい!』という会話が、世界に先駆けて十勝で起こってきて、小学生が農業者になりたがるんじゃないでしょうか!?」

坂根さん 回答:カリスマ・ファーマー★
「これからどんどん人口減少が進むと農業者も減ると思うんです。そうなると作物はロボットが作ることになっていくと思うんですが、その中で『この野菜は〇〇町の〇〇さんが作った』っていうのが凄い価値になると思うんです。するとトウモロコシをつくっている〇〇さんはカッコいいみたいな流れになって、小学生の憧れの職業になるんじゃないかと。生産者の顔が見える十勝限定ですかね?(笑)」

林業編

登壇者: minotake forest works代表 川瀨千尋さん、冨山商店 冨山太一さん

自己紹介

川瀨さん
「minotake forest works という森づくり団体を運営している川瀬です。次の世代に森を引き継いでいくことと、しっかり稼ぐことを両立する団体を目指しています。私たちは主に、自伐型林業による森づくり、木材とか樹液の販売、山菜といった素材生産、あとは特殊伐採などの仕事をしています」

冨山さん
「池田町と士幌町にある所有山林にて、近自然(きんしぜん)の森づくりというものを行なっています。『近自然森づくり』というのは経済性と環境性を二項対立にせず、その両方をまた、防災性やレクリエーションの部分でも同時にかなえていこうという森づくりです。将来100年後の人たちが森に来たときに美しい空間だと感じられたり、その時代の木こりや森づくりをする人たちが、その森からいい素材を享受できたりするといいな、と思いながら森づくりを行っています」

左から、冨山商店 冨山さん、minotake forest works 川瀨さん

林業のお題1:2030年、山林を所有する若者が急増!なぜ?

冨山さん 回答:コモンと自伐型林業
「若者たちの中で、社会的な共通資本としてとらえる動きが出てくればと思っています。山林というのはだいたい所有者がいますが、山林の所有者は山林や森林を好き勝手やっていいというわけではないですよね。責任を持った若い人が、自分たちでフィールドを持って、実際にプレーヤーとして自伐型林業に取り組もうとする人たちが出てきたらいいなと思っています」

川瀨さん 回答:超長期の投資手段
「超長期の投資手段で山林が選ばれます。私は、ファイナンシャルプランナーの資格を持っているんですが、山林は様々な価値を生み出します。例えば、100m×100mの40〜50年経った広葉樹林の十勝の相場は20万円くらいですが、キャンプ場を作りたい人は、木を切り、それを売ってキャンプ場を作ってもいいでしょう。重油が値上がりしているから、薪ストーブがある人は薪を炊いて暖房費の節約に繋げることもできます。きのこや山菜を採ることで食費の節約にもつながります。単純な不動産にはない価値が山林にはあります。山林を安いうちに買って、適切な管理をすることで将来もっと価値を大きくして子どもたちに引き継ぐといった投資手段になると思っています」

林業のお題2:2030年、十勝の森林が観光客が大人気!なぜ?

川瀨さん 回答:ポルポル!! 十勝ポルチーニまつり
「ポルポル!! 十勝ポルチーニまつりが開催されます(笑)。みなさん、ポルチーニというキノコをご存じですか? 和名でヤマドリダケと言われるキノコです。実は十勝にもたくさんあるので、『森へ行って、でかいポルチーニを探そう!』というキノコをメインとする観光イベントを、十勝で開催できたら面白いなと思っています」

冨山さん 回答:楽しみと癒し。
「森林の機能として、レクリエーションという部分が注目されているのですが、十勝には意外と森林が多く残っているので、この中で楽しめたり、どう癒されるのか、もっともっと発見されていってほしいですし、私も皆さんが発見されるよう尽力したいなと思っています」

漁業編

登壇者: 保志漁業部副代表 保志弘一さん、大樹サクラマス養殖事業化研究会会長 高橋良典さん

自己紹介

保志さん
「広尾生まれ広尾育ち、祖父から数えて3代目の漁師です。昆布とツブ(貝)をとりながら、林業にも取り組んでいます。現在、地域の酪農家、商工会、地域おこし協力隊、観光事業者、狩猟者などとともに地域の未来、産業の未来を本気で考える団体『ピロロ企画』の運営もやっています」

高橋さん
「宇宙の町、大樹町から来ました。私は定置網で秋鮭をとっています。また、大樹町の協力を得ながらサクラマスの養殖を試験事業に取り組んでいます。なかなか上手くいかず課題が山積みですが、みなさんに披露できるように頑張っています」

左から、大樹サクラマス養殖事業化研究会 高橋さん、保志漁業部 保志さん

漁業のお題1:十勝の漁業者が新事業に参入!! 一体 何?

高橋さん 回答:秋鮭の船上活締め(かつじめ)
「みなさん『活締め』をご存知でしょうか? 生きている間にエラの部分を切って、血抜きをした魚です。活締めのメリットは、臭みがなくなったり、鮮度が長く保てることです。生食で食べられるような魚は、よく活締めにするんですが、秋鮭は今までされてきませんでした。『焼いて食べているような魚でも活締めしたほうが美味しいのでは?』という新しい考え方で、実は今年から試しにやってみているところです」

保志さん 回答:他産業→漁業 漁業×(  )
「新事業に参画というよりは、漁業×(  )のように多産業から漁業に参画することが増えてくるんじゃないかなと思います。漁業って見方を変えると、教育の現場にもなります。どういうふうに物を食べるか、どういうふうに物が作られるかを含めて、食産業に関わる人にとっては教育という側面もあるんですよね。ここの×(  )の中は、皆さんの引き出し次第でどういう組み合わせもできて幅が広がっていくと思います」

漁業のお題2:2030年、十勝漁業を支える魚介類は〇〇に!一体何?

高橋さん 回答:養殖サクラマス
「自己紹介でも話しましたが、大樹町の協力を得ながらサクラマスの養殖にトライしています。北海道では養殖が盛んではなく、天然物を獲るのが当たり前でした。ところが、天然物が獲れなくなってきたことで、北海道でも養殖ができないかということで動いています。十勝の漁業を支えられるように頑張ります!」

保志さん 回答:海藻(昆布!)と養殖
「海藻(昆布!)と書きましたが、昆布だけじゃなく海藻を育てるっていうことは、魚がいる場所を育てるということに繋がります。また、高橋さんが取り組んでいる養殖は、十勝の海ではハードルが高く大変ですが、天然魚が取れないという時には絶対に必要になるので、やっぱり『育てる』ということが大切なことだと思います」

食産業編

登壇者: 株式会社満寿屋商店代表取締役社長 杉山雅則さん、有限会社十勝スロウフード 代表取締役 藤田惠さん、有限会社中田食品 代表取締役社長貴戸武利さん

自己紹介

杉山さん
「満寿屋商店の杉山と申します。当社、満寿屋商店は十勝に7店舗のベーカリーを持っています。パンに使っている小麦は全て十勝産100%で全ての商品に使っています。『2030年、十勝がパン王国になる』が弊社のビジョンです。」

藤田さん
「十勝スローフード 代表取締役の藤田です。私たちは、牛を買ってきて育成し、肉を加工して牛トロフレークという商品を主に作っております。『十勝清水の牛トロ丼』は、東京ドームで行われる全国どんぶり選手権で毎年入賞し、ご好評いただいています」

貴戸さん
「有限会社中田食品 貴戸と申します。食料品製造業で主な製造品目は、豆腐・油揚げ。地元さんの大豆を使ったものになります。大豆の国内自給率って知っている方もいると思いますが、6%ぐらいと言われています。国内に出回る、ほとんどの大豆製品は外国産原料を使っているんですが、弊社は地元の方々のご協力をいただきながら、十勝産大豆100%の製品にこだわっています」

左から、中田食品 貴戸さん、十勝スロウフード 藤田さん、満寿屋商店 杉山さん

食のお題1:2030年 十勝の食品「○○」が輸出され海外で大人気に!何?

貴戸さん 回答:ますやパンの白スパサンド
「同席している杉山さんが先輩経営者だから忖度しているわけではないんですが、18年ぐらい十勝を離れて道外で生活していて、帰省した際にどうしても食べたかったものの1つが白スパサンドだったんです。白い食パンに白いスパゲティが挟まっていて、豆腐と同じ真っ白な食品なんですよ(笑)。癖になる味わいです!」

杉山さん 回答:十勝ラクレット モールウォッシュ
「これは、十勝川温泉の温泉水でラクレットというチーズを磨いて熟成させたチーズです。十勝川温泉の温泉水で磨くことによって、通常のラクレットとは風味の違う、まさに十勝ならではの環境から生まれたチーズです。これだけ酪農業が盛んでチーズの生産もチーズ庫もたくさんある十勝の魅力をグッと集めたような、そんなチーズです」

藤田さん 回答:イモと小麦 うどん 牛肉
「最初に思いついたのはじゃがいもと小麦でした。そして、じゃがいもと小麦で何ができるかと考え、うどんも書きました。あとは、小さく牛肉と書きました(笑)今、高品質な牛肉も十勝でたくさん育てているので、円安の影響もあり海外に出荷されるだろうなと思っています」

食のお題2:2030年、十勝が「◯◯王国」に!何王国?

杉山さん 回答:パン王国
「当社のビジョンです。2010年に十勝をパン王国にしようとビジョンを作りました。しかも目指したのがまさに2030年。パン王国になれば、十勝中においしいパンがあふれるような状態になるはずです。
十勝といえども、食べているパンの7割は外国産小麦のパンで、まだまだ十勝の小麦のパンが食べられてないんです。十勝のパンのレベルがグッと上がると、その他の食品と組み合わせて、非常に豊かな食文化がここで形成されると思います。
食文化が高まっていくと、十勝にたくさんの人がパンを求めてやってくるようになります。十勝といえばパン、その他にも美味しいものがたくさんある。そうなれば、世界中からたくさんの人が集まってくると思います。そして、このイベントと同時開催されている『北海道宇宙サミット』ですけれども、大樹町に宇宙港ができたら、これから宇宙に旅立つ人が地球最後の食べ物は十勝で食べる事になるんですよ。その中心がパン王国だといいなと思います」

藤田さん 回答:ワインと牛肉
「杉山さんのパン王国を受けて、当然パンにはワインと牛肉も必要だろうということでこの答えにしました。今、十勝ではワイナリーがたくさんできています。農家さんがブドウを育てて、そこからワインを作るというテロワール(ぶどう畑をとりまく自然環境、土地の個性)を、ワインだけじゃなく、牛肉や他の十勝のものすべてを地元のものだけでやろうとした時に成り立つのが、この十勝の魅力だと思っています」

貴戸さん 回答:食の情報発信王国
「先日、帯広市役所の食育授業の一環として、豆腐の手作り体験教室を地元の小学校でやってきました。今の小学生は十勝が『豆の国』といわれる理由や、豆の生産量が多いという情報を、まったく知らないんですね。このままでは、知らないまま大人になってしまうと思います。
文字情報は、時間とともに忘れてしまいますが『あの時のあれっておいしかった』という記憶は忘れていても思い出すことがあると思うんです。そうやって思い出せる子どもたちが、これから8年間、2030年までどれだけ育つのか。1万人以上は育ってほしいし、そのうちの1%の100人ぐらいが、二十歳になって十勝以外に住んいでいたとしても、十勝はいいところだったなと思ってほしいです」

「ビジネスカンファレンスで『大喜利?!』」と来場者の関心も非常に高かったこのセッション。登壇者の個性あふれる回答の数々に、スマホを使った会場参加者のコメントがスクリーンに飛び交いました。特に林業・漁業など地元の方でもあまり馴染みがない分野の登壇者に会場は興味津々。来場者は一次産業・食産業の登壇者達に温かい大きな拍手を送り大盛況で幕を閉じました!

まとめ

6時間を超える十勝アグリ&フードサミットは、大盛況で終了しました。セッションの中では一次産業と食の未来についての熱い意見が交わされ、地域内外からの視点から刺激的な意見も飛び出しました。通常のビジネスカンファレンスでは見られないような個性的なセッションが続き、6時間もあっという間に感じました。
十勝アグリ&フードサミットで繰り広げられた4つのセッションの内容が、一次産業や食の未来にどのような影響を及ぼしていくのか? 登壇者や参加者などの交流から、どんな事業共創が生まれるか? これからも目が離せません!


前編はこちら