北海道・十勝で、ものづくり分野で活躍している企業と、その商品をクローズアップしてご紹介します!
1970年(昭和45年)、十勝・帯広市(大正)で創業したノブタ農機株式会社。
創業時より農作業の効率化を図るために様々な農機具を開発。近年では規模拡張や労働者不足に直面しているユーザーの支援を目的とした、農産物の選定作業ラインを設計・設置までを総合的にサポートしている。
ノブタ農機が開発している製品は、1製品につき1機能だけが備わっている製品が多い。
それらをユーザーの環境に合わせて自由に組み合わせることで、ユーザーにとって本当に無駄の無い作業ラインを組むことができるため、結果トータルにコストを抑えることができるシステムだ。また、このシステムは小さな青果店から大きな事業所まで、事業規模に合わせて提案・販売ができるというメリットもある。
また、ユーザーにとって効果があると思えば、他社製品も積極的に提案し、導入後のメンテナンス等のサポートも自社製品同様に行っている。
現在では、メインの農産物「選別ライン」だけでなく、これまでの製品開発で培った技術力を活かして、フォークリフトに装着するアタッチメントなども開発している。
画像左から「ローリングバケット」、「ローリングバケット(ステンレス製)」
この「ローリングバケット」という製品は、フォークリフトのフォーク部に取り付け、マストを傾けるだけで、バケットが転回し中の積載物を放出することができる(下画像)。例えば、「バケットに廃棄物を入れ一杯になったらトラックの荷台に積み込む」という、一般的にはホイールローダー(重機)などで行うような作業も、フォークリフトがあれば可能となる。
バケットが展開する様子
また、誤ってバケットが転回するのを防ぐロック機構が付いており、運転席にいながらロックの解除ができるので作業効率も良い。
この製品のアイディアは、海外の農機具展示会へ視察に行った際、展示会の撤収作業時に使用されていた機械を見て思い付いたという。製品開発のヒントは、どこに転がっているかわからない。
次に紹介するアタッチメント「フレコン吊具(NFH24)」は、フォークリフトに装着することで、「フレコンバッグ(主に粒状物の荷物を保管・運搬するための袋)」を、クレーンなどを使わずに吊り上げて運ぶことができる。
フレコン吊具(NFH24)
この吊具は、フックの位置が最初からフレコンバッグの背の高さにあるため、リフトを少し上げるだけでバッグを吊り上げて移動することができる。
リフト部分を必要以上に上げる必要が無いため、運転者の視界も確保できる。そのため「リフトを上昇させたまま移動し、バックレストをシャッターにぶつけてしまう」……という、フォークリフトで非常に多い事故の対策にも有効だ。
フレコン吊具(NFH24)使用時の比較
また、フレコンバッグの形状に合わせて、フックの数や位置を自由に変更できる拡張性を備え、使用しないフックは本体に収納できるなど、細かい気遣いが随所に感じられる。
拡張性のあるフック取付システム
使用しないフックは本体に収納できる
フォークリフトは、1次産業(農業・林業・漁業)だけでなく、荷運びを必要とするほとんどの現場で使用される最もポピュラーな重機で、市場の大きさは計り知れない。
「ローリングバケット」、「フレコン吊具」を開発し、受注・生産も軌道に乗ると思えたが、売れるのは道内のユーザーがほとんどだった。道外からも問い合わせはあるが、製品を発送するための輸送コストが販売の足かせになっていた。
大きい=発送できない=遠くには売れない、という課題に直面していたとき、偶然、テレビで流れていた大手家具メーカーのCMを見て思い付いた。
「うちの製品も組み立て式にできないか?」
開発した製品を、一般の運送会社でも発送できるサイズに、分解・梱包できる様に設計を一から見直した。
組み立て式にしても強度を損なわない様に、鋼材の変更、固定するボルトのサイズ・数・位置を調整、そして実際に重荷を吊るし耐久試験を繰り返しながら、改良を重ねた。
耐久試験の様子
また、誰が作業しても正しく組み立てられる様に、とことんシンプルな構造にもこだわった。大手家具メーカーのサービスを参考に、製品の組み立てに必要な工具を製品と一緒に梱包する徹底ぶりだ。
主力商品「フレコン吊具(NFH24)」の組み立ての様子を、動画(59秒)にまとめたのでご覧ください。
フレコン吊具(NFH24)組立動画
これまでも、納品先の工場(シャッター)の高さに合わせて設計を変更したり、輸送トラックの荷台幅に合わせて製品規格を調整したりと、その都度ユーザーの要望に合わせて設計を見直し納品してきた。「技術力のあるスタッフを抱えるうちだからできること」と、信田哲宏社長は自負する。
また、フレコンバッグを使用しているユーザーに好評な「フレコンスタンド」という自社製品がある。このスタンドを使用すると、バッグが空の状態でも自立させることができるので、作業が効率化できる。また、中身がいっぱいになったバッグからスタンドが容易に取り外しができる様に、脚の形状も工夫されている。
フレコンスタンド使用例
さらにこのシリーズには、サイズ違いのフレコンバッグにも対応できるように、スタンドの高さやリング径にアジャスト機能が付くスタンドなどもあり、実際に使用してきたユーザーの声が色濃く反映された人気製品だ。規格を調整できるフレコンアジャストスタンド(同一製品)
現在は、この製品も分解・組み立てできる設計に見直したことで、全国への販売・発送が可能になった。
また、組み立て式にしたことで、パーツの一部が破損した場合にも修理や交換が容易になり、メンテナンス性も向上している。こうして「発送」という課題を受けたことで、これまでの製品も生まれ変わり、新しい販路を拡大している。
ユーザーの要望に合わせて設計を見直し続けることで、技術を磨いてきたノブタ農機。ユーザーが何を欲しているかを最優先に考え、実際に製品を使うユーザーの作業効率化を図る姿勢は、創業時から変わっていない。
「何か課題に直面する度に、製品の見直しをする”きっかけ”がもらえる。そして気付かせてもらえる。本当にありがたい」と、信田社長は笑いながら語ってくれた。
ノブタ農機株式会社/信田哲宏社長
■会社概要
ノブタ農機株式会社
〒089-1247 北海道帯広市昭和町107-15
TEL 0155-64-5411
FAX 0155-64-5398
HP http://www.nobuta-nouki.jp/