十勝での新事業創造を目指す参加者が、5ヶ月に渡るセッションを通して仲間を見つけ出し、事業プラン発表までを支援するプログラム。2015年に第1期が実施され、今年で4期目。第3期までに打ち出された28件の事業構想の内、7つの事業が会社設立※に至っている。
※2018年6月11日時点
※革新者:革新的な事業モデルを展開している、全国各地の実力者。
10月26日に実施されたTIP【第4期】7回目となる「ブラッシュアップセッション②」のレポートをお届けします!
今回は、プレゼンテーション本番(事業化支援セッション)前、最後のリハーサルです。この日までに準備を整えた9チームが、本番同様に発表。アドバイザーからのフィードバックを受け、最終仕上げに移ります。プレゼンテーションの持ち時間は7分間。時間厳守のための努力も必要とのこと。
はじめに、数々のピッチ※イベントでの優勝経験を持つ、セッション推進チームの濱田さん(農業情報設計社)から、“プレゼンテーションの極意”が語られました。
※ピッチ:事業の要点を短時間で分かりやすく伝えるプレゼン手法。
「プレゼンテーションは、出資者や新たな仲間を募るために行なうものです。つまり、“事業に力を貸してくれる人”に対し、事業のポテンシャルを感じてもらわなければなりません。そのためには、“事業内容を正確に伝える”ことに注力するのではなく、自分達の事業への愛を伝え、“最後までやり遂げる”ことを信じてもらう必要があるのです」。
「今日指摘された点には、必ず何かしらの問題があります。できるだけ修正した方が良いでしょう。ただし、修正の内容は自分達で決めるべきです。何をどのように表現するか、新しい視点から再考してみてください。そして、発表は元気に行いましょう!」
こうして各チームのプレゼンテーションがスタートしました。順番待ちのチームは、チーム毎に打ち合わせを行い、準備を進めます。
「100年後の十勝のために、人材教育に投資したいと考えています。学生と現場(生産者など)をつなぐシステムを構築し、地域の未来を担うよそ者・若者・馬鹿者を定着させます」。
●アドバイザーのコメント
「理念の説明は短くても伝わるもの。最初の1分以内で、要点を説明すると親切では」「構想の背景が壮大すぎる。学生側のリアルな事情が背景として相応しいのでは」「他のインターン制度との違いを明確に提示する必要がある」「学生の本分が成り立つよう、知的な対価が得られるシステムになると良い」
「現代に失われつつある、人と人との繋がりを生み出すコミュニティを創出します。料理教室などの様々なアトラクションを企画し、職場でも家庭でもないサードプレイスを提供します」。
●アドバイザーのコメント
「プレゼン後半に出てきたキーワードこそが重要。構成を変更した方が良い」「事業の趣旨を表すキャッチーなタイトルがほしい」「運営パターンを再検討した上で、課金システムを再考すると良いのでは」「スタッフの能力の限界を超える仕組みがあれば、事業の継続・発展性が見込める」
「樹皮や樹液など余すことなく使える白樺ですが、現在は有効活用されていません。白樺を使用した商品開発やワークショップを通して、自然に寄り添った生活を提案します」。
●アドバイザーのコメント
「北海道らしい“白樺産業”の第一歩になると期待している」「ビジネスとしての魅力を最大限に表現する何かがほしい」「目標を高く設定し、考えうるマーケットだけでなく新たなマーケットを掘り起こすことも検討してはどうか」「新聞記事や動画を用いるなど、プレゼンにインパクトを与える工夫がほしい」
「利活用されていない空き家をユニークにリノベーションする活動を通し、“自分たちが街をつくる”という意識を十勝中に広げたいと考えています」。
●アドバイザーのコメント
「荒れた空き家が生まれ変わるビフォーアフターがもっと見たい」「自分たちの都市計画ポリシーやセンスなど、個性を明確に打ち出すべき」「連携先を十分に見極めた上で、スピード感ある自由度の高い活動になると魅力的」「空き家が利活用されない現状の裏には“感情論”があるはず。リサーチと共に、突破する手立てをプレゼンに盛り込むと良いのでは」
「野生鳥獣による農林業被害が深刻化する昨今。ハンターの高齢化が進み、ハンター人口が減少する中で、全国の支援者が地方のハンターを応援するプラットフォームを作ります」。
●アドバイザーのコメント
「支援者によって、応援したいハンターは違うはず。登録ハンターのキャラクターをホームページ上で個性的に表現できれば、反響がありそう」「支援者への返礼品である食品(狩猟で仕留めた野生鳥獣肉)の安全性確保は、事業継続のために重要な課題。プレゼンに盛り込んだ方が良い」「ハンター志望の若者に役立つ情報を提供する仕組みがほしい」
「個人の適性にあった働き方を生み出し、ひきこもりやニートの働く場を創出。チーズ作りを通して“モノづくり”や“生きるコト”を学ぶ機会を提供します」。
●アドバイザーのコメント
「チーズ工房とひきこもりの関係性を最初に伝える必要がある」「機会を“提供してあげる”という感覚から一歩踏み込み、ひきこもりの本質を捉え、ポジティブに発信できると理想的」「マネジメントが重要になる。どのような立場の人がどのような割合で運営していくのか想定してはどうか」「正しさではなく、幸せを表現できると良い」
「廃墟などの“古い・汚い・怖い”地域のマイナス要素を活用。人々が“ウィルスに感染してゾンビになる”というストーリーで、街をジャックするコンテンツを多数展開します」。
●アドバイザーのコメント
「“デッドスペース”という、マイナスをプラスに変えて事業内容まで表現している事業名がスマート」「札幌にもゾンビファンがいると聞いている。札幌に遠征する企画や、映画館とタイアップする企画など、様々な可能性を感じる」「制限時間に収まるよう内容を削り、文字は大きく、文字数は減らして最終調整した方が良い」
「インターネットを中心とした情報過多の時代に、“必要な情報を必要な人に届ける”新スタイルのフリーペーパーを制作。僅かな情報から想像を膨らませ意思決定を行うという、人間らしい豊かな時間を提供します」。
●アドバイザーのコメント
「数ある情報誌の中から手に取ってもらわなければならない。そのためには、インフルエンサーと接点を持つシチュエーションを具体的にイメージする必要がある」「フリーペーパーではなく、販売するパターンも検討してはどうか」「情報の真偽を見極めにくい時代なので、新聞と連動することでスケールが大きくなる可能性を感じる」
「“農業王国”、“フードバレー”の名に恥じない十勝を目指し、食のマイノリティのための商品開発や情報発信、“ベジタリアン対応”ロゴマークを活用した活動を行います」。
●アドバイザーのコメント
「十勝らしい」「“ベジタリアン対応”表示食品の品質を担保する方法論が必要。プレゼンに盛り込んだ方が良い」「世界で市民権を得ている食文化が十勝で普及しない理由と、そこから浮かび上がる課題をブレイクスルーできるか探ってみては」「十勝中を巻き込む戦略が必要」「“ベジタリアンだからこそ発想できた”というストーリーで表現できると理想的」
こうして、この日のリハーサルは終了しました。
アドバイスは、事業内容や発表内容、あるいはチーム名に反映されます。
次回は、いよいよ本プログラムの最終回「事業化支援セッション」です!
これまでに一度も発表していないチームもあるため、当日何が起こるか…現段階では“予測不能”なのだとか。
TIP事務局が各チームを密着サポートし、本番直前までブラッシュアップするそうです。
当日事業化支援セッションの参加申し込みは、とかち・イノベーション・プログラム事務局(帯広信用金庫内)まで。
<TIP 2018 事業化支援セッション>