十勝エリアは農作物ばかりでなく、畜産分野、特に乳についても一大生産地である。昨今、飲用乳ばかりでなく、乳の高度加工利用として様々な加工品が市場においても大きなシェアを占めるに至っている。十勝エリアにおいても、ここ数年フェルミエタイプのチーズ工房が増加してきている。しかし、その品質及び安全性についてはその消費に比例して伸びないというのが現状である。従って、今から地域固有の技術を持ち、日本人の嗜好にあった新しいチーズ文化を形成しなければならない。また、安全性についてはここ数年非常に重要な課題として取り上げられ、特に微生物が要因となる衛生関係についてはその検査について特殊な技術を必要とすることから、中小企業においては浸透していないのが現状である。これらを解決すべく「@エンテロトキシンA産生黄色ブドウ球菌判別試薬キットの開発」「A地域独自の製造用スターター(酵母、乳酸菌)の開発」の2課題を実施することとしている。 |
平成17年度の研究において、具体的に以下の成果が得られた。 |
@エンテロトキシンA産生黄色ブドウ球菌判別試薬キットの開発 |
1. |
試験用菌株の収集を食中毒菌及び乳製品関連菌から行い、57菌株を入手した。 |
2. |
黄色ブドウ球菌遺伝情報から、エンテロトキシンA遺伝子増幅用プライマーセットを設計(3組)、増幅を確認した。その結果、ループプライマーを利用することによりLAMP反応時間の短縮が実現できた。 |
3. |
DNA抽出条件及びLAMP反応条件について、その最適な条件を検討中である。 |
A地域独自の製造用スターター(酵母、乳酸菌)の開発 |
1. |
熟成の制御を行うことによる高品質化が可能となった。すなわち、カビ混合型では内部のカビの生育を適度に抑制し、たん白質の過剰分解による風味バランスの劣化や販売期間の短さを改善する可能性が考えられる。また、カビ噴霧型では表面からのカビによるたん白質分解とは別に内部からの酵母によるたん白質分解を促進することで、適度な旨味の増加と熟成期間の短縮が可能となった。 |
2. |
意図的に酵母を導入することで、酵母の菌叢を優性に保ち、他の汚染酵母の生育を抑制し、汚染酵母による風味産生ムラや不快臭生成を抑制し、品質を安定させると同時に高品質化が可能となった。 |
3. |
酵母の意図的導入は、チーズカード中に残存する乳酸をすばやく消費し、汚染菌の栄養源を消失することで、初期汚染による品質劣化の危険性を非常に低減させることが可能となった。 |
これらの成果が得られたことから、平成18年度は引き続き以下の項目について検討を行い、さらなる特許化、商品化を随時実施する。 |
@エンテロトキシンA産生黄色ブドウ球菌判別試薬キットの開発 |
1. |
平成17年度に作製したプライマーの特異性、検出感度に関する検討を行うことよる性能評価を実施する。 |
2. |
LAMP反応に最適なDNA抽出条件の検討を行う。併せて、乳、チーズからの黄色ブドウ球菌DNA抽出法についての検討も行う。 |
A地域独自の製造用スターター(酵母、乳酸菌)の開発 |
1. |
セミハードタイプのゴーダチーズにおける酵母スターターの有用性を確認する。
酵母スターターとしては平成17年度に用いた酵母のほか、新たに風味生成、ガス産生性の酵母スターターについても試作を行う。同時に対照となる酵母スターターを添加しないチーズを試作して比較を行う。 |
2. |
ハードタイプチーズの製品開発を行う。モデル製造によるメリットの確認、試作評価、効果的な製造条件の検討を実施する。 |
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