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公益財団法人とかち財団

とかち財団は、十勝にイノベーションを引き起こす産業振興のプラットフォームです。事業の立ち上げ、商品開発、企業間コラボレーションなど、あなたのビジョンを実現するためのあらゆるステップに力を尽くします。

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とかち財団では、令和4年度「とかちビジネスチャレンジ補助金」への申請者を募集しています。そこで、過去の補助金採択者のインタビューを全3回にわたって掲載します。過去採択者の皆さんの当時の状況や、どのようなことを考えて事業を実施していたのかといった思いが、今後応募を検討されている方々にとって参考となれば幸いです。


第3回は、令和3年度「アーリーステージ事業者支援助成金」で事業を実施した、フォレストデジタルの辻木勇二さんです。


【フォレストデジタルの辻木さん。】


−現在の事業内容について教えてください。


"ひととき旅"ができる没入自然空間「uralaa(うらら)」の開発、提供を行なっています。デジタル技術を用いて、あたかも森や自然の中にいるような体験ができる没入型自然空間を提供しており、これはヘッドマウントディスプレイ等の器具を身体に装着する必要がなく、子供やお年寄り、身体の不自由な方でも気軽に体験することができます。


【uralaa park urahoro(うららパーク浦幌)の"ひととき旅"ができる没入自然空間。360度のマルチ大型スクリーン、サラウンドの音響システムを用いた没入型自然空間が広がる。フォレストデジタルのWEBページはこちら。】


「テクノロジーは私たちを幸せにしているのか?」という疑問がきっかけに。


−「アーリーステージ事業者支援助成金」に応募した経緯について教えてください。


元々私は東京のIT企業に勤めていたのですが、その際に「テクノロジーは私たちを幸せにしているのか?」という疑問を抱えていました。そんな中、2017年に浦幌町で行われた、地域の魅力発信や新産業の創出を目指す「うらほろWORKCAMP」に参加し、東京を拠点とする20名ほどの企業人の団体で浦幌町に足繁く通っていました。その中で浦幌町の林業体験や林業従事者の方々との対話したことで、自然や森林に包まれる感覚をテクノロジーで再現するということを思いつき、まずは「uralaa」のプロトタイプを開発しました。モニターテストを行った結果、人々のリラックス感が高まるという結果が得られたことから本格的な商品化に進むことを決め、2019年11月に仲間と共にフォレストデジタルを浦幌町で立ち上げました。


最初の施設であるuralaa park urahoro(うららパーク浦幌)は2020年12月にオープンし、町の方々に「"ひととき旅"ができる没入自然空間」の体験をしてもらいました。その後、2021年には、「十勝の森を銀座に出前」というテーマで、銀座で「十勝うらほろの森」を体験してもらうイベントを開催しました。一方、これらは我々がオーダーメイドで空間を作って提供するモデルであったため、我々が現地に行かずとも同様のサービスを体験してもらえるよう「uralaa」の量産化のためのプロダクトを開発するため、とかち財団の補助金に応募しました。


補助事業では、「uralaa anywhere」というコンセプトで、「uralaa」をスマホやPCで操作できるシステムの開発を行いました。補助金の交付決定後、2021年7月から12月までが開発の集中期間でしたが、テスト用のset up box(専用PC)、360度の投影用コンテンツの制作編集用PCや周辺機材をスピーディに調達し、PDCAテストをすることができました。また、2022年1月のリリース発表会は浦幌町と東京大手町で行い、林野庁に後援いただくとともに、共創パートナーとして20の企業・自治体が参画しました。


失敗は苦労ではなく、新たなチャレンジを続けていくために必要なもの。


−「uralaa」の特徴や、サービス提供後の効果はどのようなものなのでしょうか。


「uralaa」はクラウド技術を用いた世界初のサービスなのですが、開発は失敗の連続でした。ただ、その経験を苦労という捉え方はしておらず、新たなチャレンジの中で失敗を評価しながらPDCAを回し、体験してもらう方に映像が継ぎ目なく綺麗だねと言ってもらえることを目指してきました。


「uralaa」の場合、インターネットと壁さえあれば、プロジェクターを用いて映像を投影することができます。従来の技術では、壁の幅や高さに合わせて映像を編集する必要があったのですが、「uralaa」は投影したい壁のサイズを入力することで自動的に映像がそのサイズに編集されます。また、北海道の映像の次は沖縄県西表島といったように、部屋の音楽を切り替えるような感覚でスマホで手軽に映像を切り替えられます。映像についても特殊なカメラを用意する必要はなく、一般の360度カメラの映像も流すことができます。


【2022年3月1日に東京大手町に常設施設としてオープンしたTOKIWA PARK by uralaa。】


「uralaa」は、常設施設での設置やイベントの際にご活用いただいています。常設施設での設置例も着実に増えてきており、商業施設やオフィスに導入したいという声を数多くいただいています。


東京や札幌でイベントを行った際には、体験していただいた方の約9割から実際に十勝に言ってみたいというお声をいただきました。例えば豊頃町のジュエリーアイスについて以前は聞いたことがあるだけだったという方が、「uralaa」の映像を体感することで、より興味が深くなるといった効果があるものと考えています。そういった方々が実際に十勝の森を訪れるといった導線を作っていければと考えています。また、首都圏であれば、なかなか森林浴の体験の機会がない方も多くいらっしゃるのですが、"ひととき旅"ができる没入自然空間を体験することで、実際の森林にいるのと同等の回復効果やリラックス効果があることも分かってきています。


その他、全国の自治体からも地元の観光をPRしていく際に「uralaa」を活用したいというお声も多くいただいています。コロナ禍で人々が自由に移動できない中、将来的に観光で訪れてもらうための事前のPRのためという意味合いでも多く引き合いをいただいています。


自分たちが心の底から良いと思えるものを追求し続けていきたい。


−今後の事業展開について教えてください。


我々は、well-being with immersive nature(没入自然空間によるウェルビーイングの実現)をテーマに掲げ、より良い体験の提供を追求しています。また、自分たちが心の底から良いと思えるもの、自分たちでもびっくりするようなクオリティでないと世の中には出せないと考えており、その点をずっと追求しています。


今の段階でも改良できる余地はまだまだあると考えており、「没入とは何か?」ということを突き詰め、例えば体験している方が左に行きたいと思えばその通りに映像が動くだとか、鳥や虫が飛んでいる、3Dの浮遊物が浮かんでいるといったように、より良い体験の提供に向け、これからもサービスの改善を進めていきたいと考えています。



あとがき


当補助金での事業は、"ひととき旅"ができる没入自然空間「uralaa」の量産化のためのプロダクト開発を行ったものでした。インタビューにおいては、特に辻木さんの高い美意識が感じられ、そのような美意識に基づいた、サービスの根源的な目的や意義を追求し続ける姿勢が非常に印象的でした。今後、様々な場所で「uralaa」の"ひととき旅"ができる没入自然空間が現れることを期待しています。


とかち財団では、「とかちビジネスチャレンジ補助金」への申請者を引き続き募集しています。十勝をより良くするための熱いチャレンジ精神を持った皆さまからの応募をお待ちしています!