10月13日に実施された「とかち財団学生起業家育成奨学金プレゼン会」のレポートをお届けします!
「とかち財団学生起業家育成奨学金」とは
2018年4月、公益財団法人とかち財団と公益財団法人起業家支援財団(横浜市)が合併。これを機にスタートした「とかち財団学生起業家育成奨学金」制度は、とかち財団が実施する「十勝ビジネス応援プロジェクト2018」への取り組みのひとつ。地域に“雇用を生み出す”経営者育成のため、若者の起業・創業を支援する。応募対象者は起業を目指す※学生であり、申請書類には「ビジネスプラン」が含まれる。
※起業の時期は問わない。
詳細はこちら <とかち財団学生起業家育成奨学金 特設ページ>
9月6日に発生した北海道胆振東部地震により、採用スケジュールに影響を受けた本事業。書類での選考を経て、帯広畜産大学(6名)と釧路高専(1名)の採用者7名がこの日を迎えました。
今回初めて採用者が一堂に会し、選考委員と事務局(とかち財団)の前で「ビジネスプラン」のプレゼンテーションを行います。
選考委員は、三品幸広委員長(帯広信用金庫 経営コンサルティング室室長)、渡辺順子委員(株式会社VM 代表取締役社長)、近江正隆委員(株式会社ノースプロダクション 代表取締役)です。
はじめに、とかち財団の長澤秀行理事長から、本事業の目的と“採用者への期待”が語られました。
緊張の面持ちで参加する採用者に対し、事務局の尾澤さん(とかち財団)が、とかち財団の事業概要、起業支援体制や今後の予定※について柔らかな口調で説明します。
※採用者が今後参加予定の「起業家支援プログラム」は以下の通り
起業家育成事業「Step up Next」、とかち・イノベーション・プログラム「事業化支援セッション」、100人のイノベーターが描く十勝ドリームマップ会議
いよいよスタートしたプレゼンテーション!採用者は、自己紹介3分、事業説明5分のプレゼンテーションを行い、選考委員からのアドバイス・コメントをもらいます。
1997年生。札幌市出身。6人家族の真ん中っ子。ヤーコン、犬、ダンスが好き。
帯広畜産大学の学生、親族、卒業生を対象とした十勝産農産物の予約制通販サイトを立ち上げた岡さん。帯広畜産大学の学生グループ「me+you」の代表を務め、すでに始動しているそうです。生産者と消費者の豊かな関係が十勝農業の発展につながると考え、消費者が葉書にしたためた“感謝の言葉”を生産者に届けているのだとか。
今後は、消費者のニーズを生産者にフィードバックするシステムや、生産者のホームページ制作、商品開発を進め、事業の完成を目指しているそうです。
●選考委員のコメント
「着眼点が素晴らしい」「事業分野によっては、連携先を見つけた方が軌道に乗るかもしれない」「大学卒業後のマネジメントが事業成長のカギとなるのでは」
1996年生。東京都出身。趣味はスノーボード。購入済みの釣竿で、釣りがしたい。
十勝ヒルズに導入実績がある、放牧飼養に適した「マンガリッツァブタ」。原産国であるハンガリーでは、「国宝」に指定されているのだとか。その肉質だけでなく、羊のような毛で覆われた愛らしい見た目も特徴的なため、十勝産ブランドに貢献するのではないかと考えた高谷さん。飲食・畜産業界以外には認知度の低い「マンガリッツァブタ」を、観光客や学生にPRし、多くの人へ拡散する仕組みを構築。十勝の観光や食を盛り上げたいと考えているそうです。
●選考委員のコメント
「知ってもらうことはビジネスの基本」「今後、他の輸入豚が十勝に導入される可能性が高いが、差別化できるか」「広告収入を得る方法も検討してみては」
1996年生。神奈川県出身。バスケットボールが得意。食用蚕の天ぷらを揚げた経験あり。
高校時代に行なった実験の一環で、飼育していた食用蚕を食べた川辺さん。「食材を無駄にしてはいけない」と心に刻んだその経験を経て、帯広畜産大学に進学したそうです。
羊肉の主要な産地である北海道では、1歳以上のマトンがジンギスカンに加工される一方で、「繁殖用高齢ヒツジ」は活用されない状況なのだとか。そこで、「繁殖用高齢ヒツジ」の肉の硬さや臭いが気にならない「発酵ドライセージ」を商品化。将来的に、原材料の仕入れから販売までを一貫して手掛けるのが目標だそうです。
●選考委員のコメント
「羊肉の生産量は、道内でも十勝がトップ。つまり日本一なので、容易にストーリーを打ち出すことができる」「原材料の確保と、価格設定については十分な検討が必要。とかち財団とタッグを組んで、ぜひ商品化してほしい」
1996年生。帯広市出身。野球とアイスホッケーが得意。野球では、甲子園出場を果たす。
帯広畜産大学で土壌学を専攻している杉浦さん。高収量・高品質な作物の生産には、土壌診断の実施と、土壌に合わせた適切な「施肥管理」が重要だと考えているそうです。
しかし、大学での研究成果が実際の農業生産現場に反映されていない現実に直面し、“既存の体制で賄いきれないサービス”の必要性を感じたのだとか。圃場に合わせたブレンド肥料を製造する「4Rカスタムブレンド肥料」事業により、十勝農業の発展と、環境負荷の低減を目指すのだそうです。
●選考委員のコメント
「大学と現場になぜ隔たりが存在するのか、深掘りする必要がある」「時間をかけて、諦めずに取り組んでほしい」
1999年生。栃木県出身。バンドマンでアイスホッケーが得意。年の離れた弟がいる。
北海道の広大な農村部において、防犯カメラを設置して子どもの犯罪被害を防止する方法は、コスト面で非現実的だと考えた讃岐さん。そこで、子どもの安全を守る防犯ネットワークを構築しようと考えたそうです。まず、中学生未満の子どもを対象に、防犯アプリをインストールした携帯端末を無償で配布。携帯端末に搭載されているGPSを利用し、自治体と協力して見守る仕組みなのだとか。配布する携帯端末は廃棄予定のものをリユースし、充電の際に広告を表示させて広告収入を得るそうです。
●選考委員のコメント
「社会的課題を解決するという着眼点が良い」「安価なGPSもあるので、中古の携帯端末を活用するなら、もう一捻り欲しい」
1993年生。神奈川県出身。自転車で日本一周していた際、野宿や職務質問を経験。
英国生活、高校中退、自転車での日本一周など、10代までに様々な体験をした芹澤さん。圧倒的な大自然の中に身を置き、ナイフ一本で命を守る技術「ブッシュクラフト」に強く惹き付けられたそうです。国内外の自然災害増加を背景にサバイバル術への関心が高まる中、「ブッシュクラフト」をベースとした、釣り、火起こし、狩猟等の“自然と遊び、自然から学ぶ”アウトドア体験を、初心者でも気軽に始められるサービスの提供を目指しているそうです。
●選考委員のコメント
「好きを貫くことが一番重要。素晴らしい」「十勝にはアウトドアガイドがたくさんいる。つまり市場はある」「管外の人が毎年訪れる“第二の故郷”を創出できるのでは」
1996年生。石川県出身。人の痛みが分かる現役大学生ボクサー。スペルト小麦を用いたお菓子作りが趣味。
ヨーロッパで一般的な「スペルト小麦」は、病害に強く、痩せた土地にも適応できる古代種で、有機栽培での実績もあるのだとか。栄養価も高く、パン、菓子、パスタ等の幅広い用途で特徴的な風味を楽しめる、魅力あふれる品種なのだそうです。
十勝から全国に“スペルト小麦ブーム”を巻き起こすべく、日本初の「北海道産スペルト小麦(スペルト小麦と既存パン用小麦との交雑品種)」を開発。生産者に対し、種子の確保から販路開拓までを一貫して支援するサービスの提供を目指しているそうです。
●選考委員のコメント
「スペルト小麦が、小麦アレルギーを発症し難いという説が証明されたら、影響は大きい」「育種過程から収量の課題に取り組めるのは強み」「全国的に展開できる可能性を感じる」
こうして7名それぞれの興味関心…“好き”が詰まったプレゼンテーションが完了し、選考委員から採用者への応援メッセージが語られ、プレゼン会は終了となりました。
「“起業”は焦らなくて良いと思います。じっくりと構想を温め、力を付け、諦めずに実現させてください。とかち財団が、そのサポートをしてくれるはずです」
プレゼン会終了後は、グループワークで和やかに交流を深めていました。
理想を掲げながらも、地に足を付けた構想を打ち出す若者の姿に、明るい未来を予感した会でした。とかち財団が最初の一歩を踏み出した“次世代の起業家を支援する”この取り組みが、ゆくゆくは十勝中に広がって実を結ぶこと、そして、採用者7名の今後の活躍を期待せずにはいられません!