Loading...

公益財団法人とかち財団

とかち財団は、十勝にイノベーションを引き起こす産業振興のプラットフォームです。事業の立ち上げ、商品開発、企業間コラボレーションなど、あなたのビジョンを実現するためのあらゆるステップに力を尽くします。

Tel.0155-38-8808お電話番号
(0155)
38-8808
Webからのお問い合わせWebからのお問い合わせはこちらから
SNSSNSでも最新情報を更新中しています!
Youtube Facebook

TOPICS

トピックス

とかち財団では、令和4年度「とかちビジネスチャレンジ補助金」への申請者を募集しています。そこで、過去の補助金採択者のインタビューを全3回にわたって掲載します。過去採択者の皆さんの当時の状況や、どのようなことを考えて事業を実施していたのかといった思いが、今後応募を検討されている方々にとって参考となれば幸いです。


第2回は、令和元年度「アーリーステージ事業者支援助成金」で事業を実施した、ciokay(チオカイ)の森健太さんです。


【ciokayの森健太さん。廃校になった小学校を改装したTOKOMURO Labに作業場を構える。ラボには他にも様々な企業が入居しており、カフェなども営業している。ciokayでは排水機能のあった元理科室を使用している。】


−現在の事業内容について教えてください。


浦幌産のハマナスと天然由来成分を原料に使ったオーガニックコスメブランド「rosa rugosa -ロサ・ルゴサ」を展開しており、ハンドクリーム、化粧水、乳液、美容液、石鹸といった製品を販売しています。ビタミンCを豊富に含むハマナスの花びらを水蒸気蒸留法で抽出した蒸留水や、保湿効果の高い北海道原生のトドマツの葉のエキスなどの天然由来成分を配合しており、合成着色料、合成香料等は一切使用していません。また、町民を対象としたハマナスの収穫体験イベントも行っており、今後は町外の皆さんにも参加してもらえるようにしていきたいと考えています。またそれらに加えて、ハマナスから抽出した蒸留水の原料販売を行っています。


【浦幌町のハマナス。町内のパートさんと共に、状態の良いハマナスの収穫を行なっている。】


浦幌町のお子さんからの意見が商品開発のきっかけに。


−「アーリーステージ事業者支援助成金」に応募した経緯について教えてください。


元々私は三重県の出身なのですが、大学時代から地方の活性化のために貢献したいという思いがあったものの、それをどう実現するかに悩んでいました。そういった状況の中、大学4年生の時に浦幌町を回るというスタディツアーに参加したことが浦幌町に来たきっかけです。そして大学を卒業後、浦幌町に地域おこし協力隊の制度を活用し移住しました。関西から北海道へ突然の移住というのは背負うものがあまりなかったからこその決断でしたが、親には事後報告でしたね(笑)。

浦幌町は、「うらほろスタイル」という、地域に暮らす子ども達を未来に繋げるまちづくりプロジェクトを行なっており、私はそのうらほろスタイルの中でも、地域に暮らす子ども達が浦幌町に戻りたい、働きたいという想いに応えるために、働き方の選択肢を増やす「若者のしごと創造事業」を担当していました。住民の皆さんと浦幌町での仕事づくりについて一緒に議論していく中で、地域の中学生から提案が数多くあった「町の花であるハマナスを使った地域活性化」というアイディアが基になり、ハマナスの栽培・商品開発が始まりました。ハマナスについて調べていたところ、美容効果やリラックス成分が含まれていることが分かった中で、自分のお母さんに綺麗でいてほしい、リラックスしてほしいと言ったお子さんたちの意見がきっかけとなり、小さい子どもから大人まで安心して使えるような化粧品を製作することにしました。現在もOEM製造でお世話になっているメーカーさんに相談したところ、地域資源を活用した商品開発という部分にご賛同いただき、地域に暮らす女性の方々にもご協力をいただき、商品開発を進め協力隊2年目で会社を立ち上げ、2018年6月からオーガニックスキンケアブランド「rosa rugosa -ロサ・ルゴサ」を販売しました。その後、事業幅を広げるためにとかち財団の補助金に応募しました。


地域に当たり前にあるものに一手間加えることで、こんな商品ができるんだという例を示していきたい。


−補助金事業ではどのようなことをやっていたのでしょうか。

補助金事業では主に、高品質な蒸留水を作るための銅製の蒸留機を購入しました。銅はステンレス製のものよりも焦げの匂いを抑えられ、抗菌作用があります。また、この蒸留機は使用後、毎日1時間ほどかけて洗浄をしています。補助金事業の中では、新潟の蒸留施設に1週間ほど蒸留技術を学びにも行きました。


【補助事業で購入した蒸留機。中世ヨーロッパで錬金術師が香水を製造していた手法と同様の蒸留機で、ポルトガルから輸入したもの。】


ハマナスの蒸留については製品販売当初は外部機関委託をしていましたが、将来的に浦幌で仕事を増やしていくことを考え、やはり自分たちの力で、自分たちの町でできるようになることが重要であると考え導入を決意しました。また、その地域に当たり前にあるものに一手間加えることでこんな商品ができるんだと、そういった例を示していきたいと考えています。今後は十勝の色々な花を使って蒸留水を作るということもやっていきたいですね。

商品の販路については、販売前の展示会への出展などを通じてすでに本州の事業者さんとも繋がりがあったので、まずはそういった事業者さんに商品を卸していき、そこから地道に広げていきました。特に本州の百貨店はサステナブルな商品への感度が高く、現在では道内よりも本州での方が取扱店舗は多くなっています。


社会全体にとっての意義や、どのような未来をお客さまと描けるのかを考えていきたい。


−今後の事業展開について教えてください。


今後は更に蒸留機を増やし、製造できる量を増やしていきたいと考えています。また、首都圏の展示会やポップアップストアに商品出展のお声がけをいただく機会も増えてきており、社員の雇用も行っていきたいと考えています。首都圏での展示会ではインターンの学生さんや協力者にお手伝いをお願いすることもあるのですが、基本的な業務については自分一人で全ての対応を行っているため、展示会などのお声がけをいただいても人員が足りず断らなければならない状況があり、そういった状況を改善していきたいと思っています。

また、蒸留水の原料販売も拡大していきたいと考えています。スキンケア製品の主成分の大半は水であるため、そこにハマナスの蒸留水を使ってもらうといったような活用例です。また、国内では国産バラを使用した蒸留水の例が多くはなく、日本のバラである「ハマナス」に注目が集まっているという背景もあります。このような取り組みを通じて、浦幌のハマナスの認知度を高めていきたいと考えています。


【"rosa rugosa"のスキンケア商品。新製品の「朝摘みローションミスト」はサスティナブルコスメアワード2021を受賞。ciokayのWEBページはこちら


そして、現在はまだまだ事業としては途上の段階です。持続的な事業としていくために利益を稼ぐことと、社会にどういった価値を還元できるのかといったことの両輪で考えていかなければならないと考えています。「浦幌産のハマナスを使って製品を作っている」というだけでは都市部でモノは売れません。環境への配慮も含め、この事業が社会全体にとってどのような意義があるのか、どのような未来をお客さまと描けるのかといったことをトータルで考えていく必要があると考えています。


あとがき


当補助金での事業は、蒸留機を購入して自社でハマナスの蒸留水を製造し、商品の販路を拡大していくというものでした。森さんの事業に対する地域住民の方々の理解や応援があり、ハマナスの収穫作業に協力してくれる方々がいたこと、森さんの商品コンセプトに共感した全国の方々を味方につけられたことが成功に繋がったポイントではないかと考えています。今後、今まで以上に日本全国や世界で"rosa rugosa"の商品が広がっていくことを期待しています。


 

次回のインタビューもお楽しみに!